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クラウングラフィック夢?の共演 4×5判レンジファインター式カメラ

 二重像レンジファインダーは、パララックス補正機能付き見た目や質感は、Linhofのような高級感は、無く雑なつくりであるが、軽さや使い勝手は、グラフレックスに軍配が上がる。かつて、カメラマンは、一発勝負の世界であったことが、このカメラで理解できる。








 かつて報道写真のメインカメラであった米グラフレックス社製スピードグラフィック通称「スピグラ」のフォーカルプレーンシャッターを省いたのが、このクラウングラフィックである。一見、金属製に見えるが、ボディは木製。 インターネットで中古カメラを見ていて、京都のMJカメラのHPで見つけたもの。ネット上での写真と説明に対し、電話ではシャッターレリーズ部分に安全ピンを使っているということで、撮影に支障はないので注文した。手元に届いたら、まず、フロントのベッドダウンの仕方が分からない。カメラ上部に全体を覆う合成皮革で少し盛り上がっている箇所を押したら、パカッと開いた。これが米国製だからだろうか?ドイツのリンホフや日本のリトレックでは考えられない雑さ。早速、撮影を試みようと思ったら、引き出しレールに手で刻み込んだキズがあるもののストッパーが無い.。
 また、ピントグラス上で焦点を合わせたものの、レンジファインダーでは二重像のままではないか。
 そこでMJカメラに問い合わせ、修理をして改めて手元に届いた。
 今度は、ストッパーが付いて、レンジファインダーとピンとグラスは一致する。当然といえば、それまでだが改めて手に持って操作すると妙に感心する。リンホフテヒニカに比べ、どこか弱そうで、部品の精密感がなく安っぽい。半面、軽く操作は、まずまずである。カメラ上部のフレームは、直視式ファインダーで後部覗き窓は距離に応じ上下させパララックスを補正するメカがついている。
 三脚に固定し、ピントグラスに映る像(これが、実際にフィルムに写る像)を見ながらレンジファインダー、及びアクションファインダーで映る範囲の違いを確認してみたが、この単純なアクションファインダーの方がレンジファインダーより正確なようである。 手持ちでの撮影は、ピントをレンジファインダーで合わせ、構図はアクションファインダー、といった感じだろう。

 さて、4×5での手持ち撮影は、今まで経験が無いのだが、このアクションファインダーは、使ってみると思いの他、シャッターチャンスに強い。走るバイクを4×5で撮影する広告カメラマンがいることを聴いたことがある。時代的には、テヒニカを使用しているものと思うが、意外に中判一眼レフを使っているよりシャッターチャンスは逃さないように思った。
 ある日、車内吊2枚繋ぎという仕事が来た。超横長である。長辺は1メートルを超える。構成は、吊橋を背景に人物が思いきりジャンプしているもの。この頃の主力機種は、ニコンD1X.。既に、フィルムは使っていない。B1ポスターに使ったことはあるが、車内吊はポスターと違い、至近距離で見ることから、画質が高い方が良いに越したことは無い。D1Xで絶えられるかどうか?と思い、この日の機材は、D1Xとこのクラウングラフィック。 クライアントもさすがに驚いた。というか、このカメラが、別の道具だと思ったくらいである。当時としては最新のデジタル一眼と60年前のカメラの共演であった。












 レンズは、OPTAR135mm f4.7。
シャッター連動金具を紛失して安全ピンで代用。逆光時には、レンズ周辺の金属が反射し、円形帯状のハレーションが生じる。


 クラウングラフィックの方は、さすがにレンズが古く、空が多く入る構図にコーティングが対応しきれず、彩度が低い仕上がりであった。
 結局、キャプチャー3.5で10メガ出力とし補間を行なったデジタル画像を使ったが、この共演は、世界中でも類が無いと勝手に自負している。
 実際そうだと思う。