【知道中国 233回】〇九・四・仲七
「掲発批判“四人幇”文選」
―理屈にならぬリクツを、誰もが本当に信じた・・・のかなあ―

  『掲発批判“四人幇”文選』(生活・読書・新知三聯書店香港分店 1977年)

 あの時に毛沢東の死がなければ四人組は続き、鄧小平は復活せず、78年末の改革・開放もなかっただろう。それは先軍政治に自家撞着を起す現在の北朝鮮を見るまでもない。

 毛沢東の死は、四人組の政治壟断を苦々しく思っていた共産党幹部にとって千載一遇のチャンスだった。「你辦事、我放心(お前がやってくれたら、わしゃ安心じゃ)」というたったの6文字で毛沢東から政権を禅譲された「英明な指導者」こと華国鋒を煽てあげた葉剣英ら長老は「赤信号みんなで渡れば怖くない」とばかりに四人組をふん捕まえた。かくして反四人組キャンペーンが全国展開されることになるのだが、「文献をしっかり学び、核心を確実に把握せよ」と題する党機関紙『人民日報』、党理論誌『紅旗』、それに解放軍機関紙『解放軍報』の共同社説を冒頭に置いたこの本から、当時の党・解放軍・政府を挙げての四人組批判の内実が伝わってくる。

 だが、四人組のどこがどう悪いのか具体的に指摘されているわけではない。社説は「華主席が我われを指導し、毛主席の遺志を継承し、“四人組”粉砕の闘争を継続することが、我が党の歴史において再度起こった重大な路線闘争である。・・・華主席を頭とする党中央の周囲に堅く団結し、華主席を頭とする党中央の戦略部署にしっかりと続き、一切の行動は華主席を頭とする党中央の指揮に従い、心を整え歩調を合わせ、“四人組”を徹底的に批判するという核心任務をしっかりと把握し、天下を大いに治める新しく偉大なる勝利を勝ち取ろう」で結ばれているが、とどのつまりなにがなんだか判然としない。まことにもって「莫明其妙(チンプンカンプン)」。四人組は四人組だから悪い。ただ、それだけ。

 そこで『解放軍報』からの転載である「12個の“ナゼ”は四人組の本質が極右であることを暴露する」を読んでみたが、これまたサッパリ判らない。最初の「ナゼ四人組は偉大な指導者の毛主席に一貫して対抗し、マルクス主義、レーニン主義、毛沢東思想をデタラメに改竄し、毛主席の指示を執行せずに歪曲し、毛主席の戦略部署に干渉し破壊したか」から12番目の「ナゼ四人組は一切を打倒し、我われの社会主義革命と社会主義建設の偉大な成果を根本的に否定し、我が党とプロレタリア階級の専制政治を歪曲し、社会主義の文化事業と経済事業に狂ったように痛打を与え、革命を破壊し、生産を破壊したのか」までを読んでみたが、さすがに文字の国だけあって悪罵の表現は見事としかいいようはないが、とどのつまり悪いから悪い。四人組は悪い。悪いから四人組。なんのことはない堂々巡り。

 この論文は「四人組は口では自分たちこそ左派であり過激派だと標榜していたが、以上のように分析しさえすれば、彼らが党に対し、プロレタリア専制政治に対し、社会主義革命と社会主義建設に対し持ち続けた態度の素地がたちどころに現れてくる。彼らは党とプロレタリア専制政治に悪意をもって攻撃を加えるブルジョワ階級の右派であり、社会主義革命を全面的に否定し根底から覆そうとする反革命派である。彼らが推し進めたのは、これ以上は右に曲がれないほどに極右の反革命修正主義路線である」で結ばれている。

 なにはともあれ四人組が一網打尽に打倒されたことを挙国一致でドンチャン騒ぎで祝い、「英明な指導者」が鄧小平に敗れ去ったことで、改革・開放が緒に就いたわけデス。まあ、なんだか訳の判らないことばかりですが、とりあえずメデタシメデタシ、でした。  《QED》