【知道中国 298回】〇九・十・念九
―熱烈慶祝GDP(09年7-8月期)8.9%達成・・・そこで温故知新を


    『美国経済的衰落』(北京大学経済系編著 人民出版社 1973年)

 この本が出版された1973年の時点では、北京大学経済系には経済学に関し当時の中国における最高頭脳が集まっていたはずだ。その最高頭脳が辿り着いた結論が「美国経済的衰落(アメリカ経済の没落)」ということならば、この考えに寸分の狂いも間違いもあってはならない。なにせ論拠は、マルクス経済学と「百戦百勝の毛沢東思想」なんだから。

 アメリカ経済の根本構造は産軍共同体制にあり、「“経済強者”という力も彼らが掌握する政治権力にあり、このような政治権力を持たない場合は直ちに自らの経済覇権を保つことは出来なくなる」(レーニン)。だから「今日の大臣は明日は銀行家。今日の銀行家は明日は大臣」(レーニン)という情況が常態化する一方で、巨大企業は競って退役高級軍人を雇用する。69年には、退役した2072人の高級軍人が軍需産業界100社に、そのうちの3分の1ほどが5大軍需企業に天下っている。このような軍需産業と軍人との強固な結びつきによって動かされているアメリカこそ国民経済の軍事化が最も深刻化した国であり、それゆえにアメリカ経済は没落の一途を辿っている――というのが、この本の主張である。

 著者はアメリカ経済の軍事化をドルのうえに築かれた「戦神」と「財神」の同盟と表現し、アメリカの防衛予算拡大の裏側を明らかにした後、だからアメリカの大資本は国際的緊張を作り出すことに日夜腐心し、各種各様の侵略戦争を世界各地で画策しているのだとも告発してみせる。こういった情況こそが「偉大なる領袖の毛主席が『戦争を渇望し、平和を望まないのは、帝国主義国家にあって侵略によって金儲けを目論む少数の独占資本集団だけである』と指摘されている」ことに繋がるわけだ。

 経済が(ということは当然のように政治も)不均衡な発展をみせるのが資本主義の避けることの出来ない宿痾であり、帝国主義段階に至って不均衡は激化する。これは独占資本による統治が競争を終焉させえないばかりか、独占と競争が車の両輪のように相乗効果を挙げることで各国独占資本間の競争が過激化し、全ての資本主義生産の無政府状態化が激しく進んでしまう。同時に科学技術が絶え間なく発展し、後発の資本主義国家が最新科学技術の成果を駆使し、他の条件を活用することで先行する資本主義国を追い上げ追い抜くことが可能となる。かくして旧い資本主義国家は独占資本による政治支配が原因となって起こる老朽化と寄生性とが顕著になり、かくて一気に没落せざるをえない。まさにアメリカがその段階にあるということを、この本は強く主張したいらしい。

 この本は「アメリカ経済の没落はアメリカの侵略政策、拡張政策と戦争政策がもたらしたものであり、内外各種の矛盾が発展した結果であり、腐り果て没落した帝国主義自らが招いたもの。歴史の規律には断固として抗うことができない」で結ばれるが、ここのアメリカの部分を中国に置き代えると、なにやら近未来の中国の姿が透けて見えてきそうだ。

 なんたって中国で最高の経済学頭脳だ。ITも、金融派生商品も、サブプライム・ローンも、リーマン・ブラザースも、「100年に1度の世界同時不況」も、ましてや胡錦濤をCEOとする超巨大コングロマリットの中華人民公司も夢想だにできなかった時代ではあったが、すでに先の先までお見通し。エライもんだ。そこで北京大学経済系に現状への見解を伺いたい。だが、「そんな本を書きましたっけ」と惚ける・・・だろうな。ゼッタイに。  《QED》