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【知道中国 323回】〇九・十二・仲九
――「現代中国政治用語死語辞典」とでもいうべきだろう・・・ |
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『“九大”文件名詞解釈』(香港朝陽出版社 1969年)
この本は、狙い通りに政敵の劉少奇ら実権派の抹殺に成功し、毛沢東が「勝利の大会」と満足げに宣言した第9回共産党大会で決議された3つの重要文献――政治報告、党章程、新聞公報にみえる「一月革命」から「議会闘争」まで170ほどの用語を選びだして詳細な解説を加えたもの。そこで、ものは試し。幾つかを適当に拾って、そのまま訳してみよう。
■「死んでも悔い改めない資本主義の道を歩む実権派」=党内のブルジョワ階級を代表する人物のこと。ある地方、ある部門において党・政府・経済・文化の指導権を簒奪しブルジョワ反動路線を頑なに推し進め、プロレタリア階級の革命路線に反対し、我が国において資本主義の復辟を狙っている。彼らは一握りではあるが、時にウソをマコトと言い張り、時に歯の浮くような美辞麗句を口にしながら徹底して抵抗を続ける。
■「群衆路線」=2つの意味を持つ。1つは人民群衆による自らの解放を指す。プロレタリア政党、つまり共産党の全ての任務は全身全霊を尽くして人民に服務すること。2つ目は党の指導工作が拠って立つところの「群衆の中から群衆の中へ」の方法を指す。
■「社会主義大家庭論」=ソ連修正主義叛徒集団は「社会主義」の旗を振りながら帝国主義の振る舞いをしている。アメリカ帝国主義と結託し、自らの世界覇権に向けて、なりふり構わずに必至に策動する。アジアにおいてはモンゴル人民共和国を植民地に変えてしまい、ヨーロッパにおいては東欧の多くの社会主義国家を属国に組み入れた。ソ連修正主義が鼓吹する“社会主義大家庭論”とは、まさに、この種の帝国主義の侵略と略奪政策を“合法化”すべく“理論”をデッチあげるためのものにすぎない。かくして、こういった“大家庭”の構成員は永遠にソ連修正主義の植民地や属国であり続けなければならない。
■「入党做官」=(劉少奇が撒き散らした)入党做官(出世)論は政治的・組織的に共産党員の魂を腐乱させ資本主義復辟の準備をなそうとする。大部分の共産党員は生きては革命のために戦い死しては革命のために献身する。全身全霊で人民に服務し、壮麗無比な共産主義のために奮闘努力の人生を捧げる。誰もが、1人残らず毛主席の立派な戦士だ。
――以上の4つの「文件名詞解釈」が特に突飛というわけではない。この本そのものが、当時の中国が置かれていた情況や共産党の“狂態”を鮮やかに描き出し、政治的マンガとしても十二分に読み応えがあると同時に、現在の胡錦濤政権が内外に向けて見せる政治的振る舞いの一端の裏側を皮肉混じりに浮かび上がらせて興味が尽きない。たとえば、「死んでも悔い改めない資本主義の道を歩む実権派」というべき現在の北京上層は「群衆路線」に背を向ける。中国が見せるASEANとの一連の協調路線は「社会主義大家庭論」が形を変えた「中華民族主義大家庭論」ではないのか。現在の共産党員の多くは「入党做官論」の持ち主であり、「昇官発財(役人として出世してカネ儲け)」の権化としか思えない。
それはさておき、この本には第9回大会で採択された「中国共産党党章程」が挟まれていた。その「第一章 総綱」にみえる次の一節は、やはり思い出すほどに抱腹絶倒だ。
「林彪同志は一貫して毛沢東思想の偉大な紅旗を高く掲げ、毛沢東同志の無産階級革命路線を最大限の忠誠をこめ、このうえなく堅固に推し進め護り続けた。林彪同志は毛沢東同志の親密なる戦友であり後継者である」。今は昔、林彪という悲喜劇の将軍アリ。 《QED》
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