【知道中国 326回】〇九・十二・念六
――少年革命戦士はカクメイ的に豹変する・・・のかなァ

  『英雄機智的紅小兵』(上海人民出版社 1970年)

 建新小学校6年生の茅、唐、李、謝クンは仲良し少年4人組。今日も革命大批判工作についての相談を終え教室を出て家路に。校門に向かって歩いていると、誰もいないはずの校庭で何やら怪しげな物音。そこで茅少年は「すぐさま、『断固として、如何なる時も階級闘争を忘れるな』との偉大なる領袖・毛主席の教えを思い出す」。遠くを見ると、怪しげな人影。「あッ、兪一平だ」。兪は「教師の間に潜り込んだ反革命分子であり、人民に対し許すことのできない犯罪を重ねてきた」。つまり批判された元教師だ。だから呼び方から尊敬の念は消え、侮蔑の思いが込められる。「兪一平のヤロー、川の畔で・・・何か落としたな」。茅、唐、李の3少年は兪を追いかけ、謝少年は貧宣隊と先生に報告するために走った。

 3人が後を追うと、兪は小屋の中に。戸をしっかりと閉め、中で寝たふり。ドンドンと戸を叩きながら、「開けろ。死んだフリをしてもムダだぞ」。と「兪一平はゴロッと体を動かし、またも死んだフリを装う」。「ゴロッと体を動かし、またも死んだフリ」とはゴ愛嬌だ。

 怒りに燃えた3人は何としても小屋の中へ入ろうと“革命的”に智慧を絞る。先ず茅少年が壁をよじ登って高いところの窓から入り、内側から戸を開けて2人を招き入れた。

 「耄碌ヤローの兪一平は目を開け小屋の隅にうずくまり、弱々しく『何をするんだ』『どうするんだ』。茅少年の眼からは階級の敵に向けた怒りの視線が迸り、兪一平を詰問する。『おいッ、川で何をしていたんだ』」。3人が交代で問い詰めるが口を開かない。そこで茅少年がリード役となってシュプレヒコールだ。「『正直にいえ。抵抗は無駄だ』『飽くまで抵抗するなら、残された道は死だけだ』。たったの3人だが、彼らの叫び声は天をも揺るがし、一言一言がまるで原子爆弾のように階級の敵の心臓を抉る」・・・モノ凄い表現だ。

 「陰険で狡猾な階級の敵は顔を引きつらせ、一転して凶相となり『オッ、オレをどうしようッてんだ』」。すると、「反動派の勢いに断固として呑みこまれてはならない」との毛沢東の教えを思い出した茅少年は一字一字ハッキリと、「お前の悪行を天下に暴露するのだ」。斧を手に少年に襲い掛かろうとした刹那、背後から「兪一平、斧を捨てろ」の大喝。貧宣隊の胡隊長が民兵や革命的な教師や生徒を引き連れて駆けつけてきた。

 少年らは隊長に報告する。その時、息を切らせて走ってきた謝少年の手から証拠の品が隊長に渡される。彼が川から拾い上げた包の中には、「国民党の蒋一味が兪一平に与えた何枚かの委任状と蒋のくたばり損ないの名前が刻まれた短剣が1本。なんと兪一平は長い間これらの悪行の証拠を隠し持ち、蒋介石の天下が戻ってくることを妄想していたのだ」。

 「兪一平は狡猾な犬のような頭を下げながら、小さな声でモグモグと『申し訳ありません』『許して下さい』」。すると隊長のリードで全員が「断固として階級闘争を忘れるな」「強大なるプロレタリア独裁万歳」とシュプレヒコール。「威風堂々の掛け声の中、兪一平はドブネズミのように頭を垂れながら民兵と紅少兵に引き立てられていきました」とさ。パチパチパチパチ。メデタシめでたし。

 現在の50歳前後は、こんな“革命的少年活劇”で育ったはずだ。そんな彼らが、いまカネ儲けに猪突猛進する。40年ほど昔の少年の頃には懸命に学習しただろう毛沢東の教えと現在のカネ儲けとの間の因果関係が知りたい。どうか教えて下さい、胡錦濤ドノ。  《QED》