【知道中国 336回】 十・一・仲四
――これを読めば優秀な中国共産党員になれる・・・かも


  『党員手冊』(本書編写組 人民日報出版社 2000年)

 この本によれば、「中国共産党に加わることを志願致します。党の綱領を擁護し、党の章程を順守し、党員の義務を履行し、党の決定を執行し、党の規律を厳守し、党の秘密を保守し、党に忠誠を誓い、積極的に工作し、共産主義のために終生奮闘し、党と人民のためにいつでも一切を犠牲にできるよう準備し、永遠に叛党行為は致しません」と誓って入党するようだ。かく厳かに宣誓して入党する党員のために、よりよい党員を目指して何を学習すべきか。どのような作風を身につけるべきか。理想的な党員像とは、どのようなものなのか――こんな視点に立って新人教育を施そうというのが、本書の趣旨らしい。

 出版当時は江澤民の絶頂期。ならばこそ当然のように、党員として学び拳拳服膺すべき第一の課題は江の“思想”といわれる「三個代表論(三つの代表論)」ということになる。

 一般的に「三個代表論」は共産党を先進的生産力、先進的文化、最も広範な人民の利益を代表するものと位置づけ、プロレタリアのための革命政党から国民政党への根本的転換を目指そうとしたとされている。だが、どうやらそうではないらしい。本書の冒頭に掲げられた「第一講 “三個代表”を真剣に学び、努めて“三個代表”を体現しよう」からは、国民政党を目指したなどという甘っちょろい考えを嘲笑い、むしろ共産党に対し、翼賛体制下での唯一無二の独裁政党としての確固不動の地位を与えようとする意図が見えてくる。

 「第一講」を正確に読めば、2000年初頭に広東省を視察した際に江澤民が主張したのは、終始一貫して中国共産党は中国先進社会において発展する生産力が求めるものを代表し、中国先進文化が進む方向を代表し、広範な人民の根本的利益を代表する――ということになる。これを譬えれば、「三個代表論」は谷垣自民党流の「みんなでやろうぜ」などといった類のヘナチョコ路線ではなく、小澤民主党の「俺の考えが党の政策であり、全国民の利益そのものだ」という剛腕路線。比類なく傲岸不遜。まさに無知蒙昧な人民なんぞに四の五のいわせない超強権政治への進軍ラッパ。党員よ、宜しく指導者の意を体せよ、なのだ。

 以下最終十二講までの表題を見ておくと、「党の労働者階級の先鋒隊たる性質を堅持せよ」「マルクス主義、毛沢東思想、鄧小平理論で頭脳を武装せよ」「マルクス主義の世界観を堅持し弁証法的唯物主義と歴史唯物主義を堅持せよ」「共産党員は徹底した唯物主義者であらねばならない」「党の基本路線を堅忍不抜で徹底貫徹せよ」「党の優良なる伝統的作風を継承し発揚させよ」「党の規律を厳格に順守せよ」「社会主義市場経済体制建設のために貢献せよ」「各種の知識を学習し把握せよ」「終始一貫して共産党員の先進性を保持せよ」「中国共産党にとっての十回の歴史的重要会議」となる。

 ここで興味深いのが最終講だ。じつは「十回の歴史的重要会議」のなかには、58年に毛沢東が提唱した大躍進政策の失敗を糾弾することとなった廬山会議(59年)、毛沢東が「(文革)勝利の大会」と浮かれ林彪を後継者として内外に向けて発表した第九回共産党大会(69年)、その林彪を「ブルジョワ野心家、陰謀家、反革命両面派、裏切り者、売国奴」と切り捨てる一方で四人組の権力が確立することとなる第十回共産党大会(73年)が入っていない。優秀な党員を目指すなら、断固として過去の失敗を詮索してはならない。ゼッタイに。

 本書は、モンスター政党・共産党による高らかな超独裁宣言でもあるのだ。  《QED》