【知道中国 342回】 十・一・念四
――とり急ぎ・・・熱烈慶祝「保八」政策大成功


 1月21日の中国国家統計局の発表に拠れば、09年10月から12月期の実質GDP(国内総生産)は前年同期比で10.7%増。09年通年のGDPは前年比で8.7%増とのこと。一昨年秋のリーマン・ショックを引き金とする世界同時金融不況の荒波を回避し、前年比8%の経済成長を確保すべく、中国政府は大規模な財政出動を実施して農村部での家電製品購入などを軸とする内需拡大策を昨春に打ち出した。この胡・温政権による「保八(8%維持)」政策が奏功したということか。加えて大方の予測では、GDP総額で今年中には日本を追い越し「世界第2位の経済大国」に伸し上がることはほぼ確実だそうだ。

 日本人としては悔しいかぎり。だが、彼らのような意地汚い罵倒は見苦しいだけ。
一先ず「保八」政策大成功をお祝いするのが、隣人たる神州高潔の民の正しい作法というもの。

 さて、今を去る50年ほど昔、毛沢東が掲げた大躍進政策に国を挙げ寝食を忘れ狂奔し、

 毛沢東式社会主義経済の成長に邁進していた頃のことだ。当時は世界第2位の経済大国であったイギリスを15年で追い越し、第1位のアメリカに追いつくと毛沢東が大号令を掛けるや、誰もが異を唱えることなく諸手を挙げて毛に唱和した。挙国一致のゴマスリである。だが、そのゴマスリには矢張り裏があったようだ。

 たとえば劉少奇夫人の王光美の実兄で著名な民族資本家だった王光英は、「我われ企業家は空気を読むことに長けていなければならない。共産党が『左』になったら、資本家は立ち位置を共産党より更に『左』に変えることができる。誰かが直ちに大声で『15年で英国を追い越す』といったら、勢いよく『2年でイギリスを』『3年でアメリカを』と。さらには『もう追い抜いた』とさえいってのける。どだい、なにか魂胆あっての発言。だが、企業家の間では極く当たり前のこと。追いつけないなどとは口が裂けてもいえるわけがない。雲を掴むような嘘八百を並べ立て、目の前の苦境を乗り切るだけ。人には生きようとする本能があり、だから誰もが環境に対応すべく努める」と、日頃から嘯いていたという。

 毛沢東の政策に異を唱えた劉少奇の義兄だが、そんなことは無関係。王光英もまた大躍進の狂騰に飛び込んでいった。もちろん「なにか魂胆あって」、「立ち位置を共産党より更に『左』に変える」。彼が企業活動の拠点としていた天津で「企業家は大躍進に即して自らを改造せよ」と呼びかけ、「企業家は半年で社会の先進分子に、1年で模範に、2年で共産党に入党」を骨子とする天津企業家向けの「改造規則」を率先して策定したのだ。

 文革時、劉少奇の義兄であり企業家であることから紅衛兵などから過酷極まりない扱いを受けたはずだが、83年には国務院直属の持ち株会社である光大集団や同集団傘下の香港光大実業で経営のトップに立つと共に、全国政協副主席、全人代常務副委員長など国政の要職を占めた。このように改革・開放を機にゾンビのように蘇生し、改革・開放当初の鄧小平時代には「紅い資本家」の代表的存在として内外から注目されることとなった王光英だが、大躍進当時の過激な言動を振り返り、一片のバカ話と笑い飛ばしたそうな。

 王光英は「立ち位置を共産党より更に『左』に変えることができる」。ならば後輩の「紅い資本家」は当然のように共産党より更に「右」にも「変えることができる」はず。融通無碍で無原則。それは共産党も織り込み済み。魑魅魍魎が群れ集い、「なにか魂胆あって」化かし合った結果が冒頭の数字なら、統計というより詐術じゃあないかなァ・・・。  《QED》