【知道中国 346回】 十・一・三一
――天に向かってツバを吐く人々


 最近、「イタリア語の話せない中国人の入店お断り」と書かれた大きなビラが、イタリアのEmpoli市内のあるファッション店のショーウインドウに張られたと、イタリアで発行されている中国語紙の「欧州華人報」が伝えている。

 同紙に拠れば、その店のオーナーは「決して人種差別ではなく、一種の抗議だ」「中国人は店に入ってきても口も聞かないし、こちらが応対しようとしてもソッポを向いたまま。イタリア語が判らない風を装ってやりたい放題。そこで致し方なく、こうせざるをえなかった。こんなことはやりたくなかった」と語っている。

 誰が通報したのか警察がやってきて、張り紙を外すよう説諭したとか。以上は香港の「星島日報」(2010年1月23日)が「イタリア服装店、華人を蔑視」と題して伝える記事のあらましだ。そこで、同記事を元にしてオーナーの気持ちを忖度し嘆き節を代弁してみたい。

 ――はい、店を始めて40数年になります。この間、いろいろの国からの観光客にお越し戴きご贔屓にあずかって参りましたが、正直いって、こんな腹立たしい経験は初めてです。手前どもでは、肌の色の違いでお客様の扱いに差をつけるなんてことは決してございません。ですが今度だけは違います。肝心なのは礼儀です。礼儀がなさすぎるのです。集団でドヤドヤと店に押しかけてきまして、こちらの話を聴いて戴けないだけではなく、たくさんの商品を試着しては、そのまま、プイッと出て行ってしまうんです。後に残るは、試着コーナー辺りに散乱する商品。元の場所に返すわけでも、片付けるわけでもなく、ハイさようならですよ。あの方々は私の店に来て、ひょっとしたらデザインを盗んでいるんじゃないかと最近は疑っているんです。そのうち、手前どものデザインそっくりな商品が彼らの手で大量生産されてしまうんじゃないかと戦々恐々・・・考えるだに恐ろしいこと。先週金曜日も2人の中国人が店にやってきまして、あの服がいい。いや、こっちが似合うとばかりに散々に試着してはみたものの、そのまま店を出て行ってしまう始末・・・。

 その後、彼らを知る私の友人から聞いたところでは、彼らは衣料メーカーのオーナーだというじゃありませんか。そのうえイタリア語が判るそうで。もう頭にきてしまい、大人げないとは思いましたが、あんな張り紙を張り出してしまった次第です――

 なにはともあれ、よほど腹に据えかねてのことだろう。

 ところで90年代後半、外国からバカにされてたまるかとでもいたげに、中国で「説不(ノーという)」を冠した本の出版ブームが起こったことがある。上昇軌道に乗った経済成長が中国人に大きな自信を植え付けたことが背景にあったことはいうまでもない。そのなかの1冊は「毛沢東時代のような対外閉鎖をしている限り中国は世界の進歩から落ちこぼれるしかなかった。対外開放という鄧小平の大英断が、中国に発展をもたらした。これから中国は世界の『軌』に接するよう努めることが肝要だ」と力説していた。ここでいう「軌」とは、世界の常識とか良識といい換えることができそうだ。中国が発展するためには、中国人全般が世界の常識や良識に沿った言動を心掛けなければならないということだろう。

 Empoli市での場合、イタリア在住の中国人が世界の「軌」と「接」っする気のないことを示す。その昔、毛沢東は「中国人は永遠に尊大であってはならない」と。さすれば彼ら民族の唯我独尊・夜郎自大体質を、毛沢東は既にお見通しだったわけデス・・・ね。  《QED》