【知道中国 348回】 十・二・初四
“超巨大夜郎自大軍事大国”に呑みこまれてはならないのです

 『論日本軍国主義』(譚光・宇征途 黄河出版社 1971年)

 「日本軍国主義は経済を復活への足懸かりとしている。(日本軍国主義復活を否定する)誤りを論駁し、さらに日本軍国主義の本質を明らかにするために、我われは日本経済の構造を詳細に分析しなければならない」と主張する本書の出版から40年程が経過したいま、改めて当時の彼らの“難癖“を見直してみると、何とも複雑な思いに駆られてしまいマス。

 日本は敗戦の焼土から立ち直って経済上の「超級大国」を自認しているが、ドルの支援に加え朝鮮戦争やヴェトナム戦争の特需によって経済危機を乗り切ったことから、アメリカ依存の度合いは極端に高い。アメリカ依存とは、つまりアメリカこそが日本製品にとっての主要な市場であり、同時に工業原料の主要な輸入先ということ。そして日本は大企業が支配する資本主義の道を進まざるをえなかったし、これからも歩む。

 確かに日本経済は年率10%以上の成長を続けてはいるが、構造的には生産と投資を未来永劫に増大させるしかない。いわば一種の自転車操業であり、生産と投資を止めたら倒れてしまい、必然的に生産過剰と原材料不足という2つの危機に見舞われることになる。成長の速度が増すほど、生産規模が拡大するほど、またアメリカ経済が危機的情況に直面すればするほどに、日本経済の危機は一層深まってしまう。

 この2つの危機を回避するための方策を、この本は「日本政府、財界、産業界から得られた資料に基づいて」分析してみせる。先ず「生産過剰の危機回避策」としては、①軍需産業の生産体制を拡充・強化する。②海外進出を積極的に進める。③情報産業、海洋産業などの新産業に積極投資することで経済発展を刺激する――の3点を挙げる。

 この本は③については「ここでは論ずる心算はない」と断った上で、「影響力が最大」である①と②について、“論証”を進める。先ず①だが、財界首脳陣が「自主防衛力の漸進的増強を」「防衛予算を国民総生産の4%規模に」「兵器輸出を」などと主張するほか、「日本の大企業と政府とは密接な関係にあり」、「防衛整備計画の基本は大企業が策定するものであり、より具体的にいうなら大企業各社で生産計画が策定された後、(政府の)防衛計画が定まる。かくて生産を刺激すべく、日本の大企業は防衛軍需部門に進軍している」とする。

 次いで②だが、「経済の急成長に伴って不可避的に生ずる危機を回避し、同時に海外市場を開拓し、併せて原材料の確保を目指し」、「日本政府は自国企業に対し開発途上国への投資を奨励している」。これに労働力不足が加わることで、日本は必然的に周辺諸国・地域に資本を積極的に輸出し生産現場を移転せざるをえない。その重点はアジアであり、であればこそ「日本とアジアの国家・地域とは運命共同体であり、アジアの国々との“共栄”を求めるなどと、日本政府高官は嘯くのである」。現在、アジア各地の都市といわず農山漁村といわず、あるいは新聞やテレビに日本商品の広告が溢れているが、「生産過剰の危機に対応するためのものだ」。そこで日本軍国主義復活を阻止せよ、ということになるわけだ。

 だが自分たちが優位に立ったと思い込むや、日本軍国主義復活批判など口にしなくなる。悔しいかな、日本も舐められたもの。だが深刻に考えるべきは、中国が挙国一致で驀進している富強の道の先に軍事超大国が待ち構えているというカラクリ。掲げた途端に色褪せるような「友愛」は「白旗」でしかないことを、彼らは百も承知、二百もガッテン。  《QED》