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【知道中国 363回】 十・三・仲一
――タイ王室の中国への傾斜は、さらに強まる |
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3月7日夕刻、タイ国王の住まわれる王宮近くに位置する首相府は、暫しの間だが政争を忘れて華やいだ雰囲気に包まれていた。
「国王の僕」であることを示す純白の制服に威儀を正したアピシット(袁順利)首相以下の閣僚と着飾った夫人たち、枢密院議員と同夫人、高級官僚、民間団体代表、華人団体代表に加え、在タイ中国大使、さらに北京から馳せ参じた中国国際広播電台、中国人民対外友好協会、中国国家外国専家局の代表が居並ぶ。
しばらくすると会場のざわめきは止み、しばしの静寂が過ぎる。国王に次いで国民の敬愛を集めるシリントーン王女のお出ましとなった。一瞬の緊張も、気さくな王女の立ち居振る舞いに和んだようだ。やがて会場のあちこちから聞こえていたざわめきは、潮が引くように消え、会場はシーンと静まり返る。
やおらアピシット首相は参列者全員を従えるように歩を進め改めて威儀を正し深々と頭を下げ、恭しく口を開く。「このたび、シリントーン王女殿下におかせられましては、『中華人民共和国十大国際友人』の栄誉を拝された由、大慶至極に存じます。これはとりもなおさず、王女殿下が中国人民千有余年の歴史における最も親しい友人であらせられることをお示しあそばされたことと拝察致すものであります」
じつは王女は中国から「中国縁・十大国際友人奨」に選ばれ、昨年12月末には北京で共産党政権N0.4の賈慶林・全国政治協商会議主席から栄誉を受けているのだ。これは中国国際広播電台、中国人民対外友好協会、中国国家外国専家局の3者共同の国際的イベントで、ここ百年のうちで中国に最も貢献すると同時に中国人民の敬愛を受け中国と最もかかわりの深い外国人を選定しようという試みらしい。
アピシット首相の祝賀の言上が続く。「伝えられるところによりますれば、今回はインターネットが用いられ、5600万を超える投票の結果、王女が東南アジアから選ばれた唯一の国際的友人とのことであります。とりもなおさずタイ国民の栄光と広く重く受けとめますと共に、タイと中国のさらに親密な友誼を導くものと確信致すものであります」
当日、首相府内の別の場所では「シリントーン王女 中国十大国際友人奨 祝賀展覧会」なる催しが行われ、中華人民共和国十大国際友人奨が飾られた会場では、王女が今年の春節にバンコクのチャイナタウンを訪れ華人団体代表や多くの住人に大歓迎された際の写真や、81年以来前後29回に及ぶ中国訪問で王女が授与された数々の褒章類や中国での活動の一端を写した写真などが展示されていた。シリントーン王女の妹君に当たるチュラポン王女もまた中国との結びつきは深い。中国の古琴の名手としては知る人ぞ知る存在。彼女の師匠は中国から移住した女性で、その夫もまた中国音楽演奏家としてタイで活動中だ。
ところで在タイ中国大使は今年の春節祝賀宴で、09年の両国の貿易総額は382.04億ドル。双方の輸出入額は09年下半期に入って回復基調にある。中国は農産品の最大の輸入国であり、08年秋のリーマンショックで打撃は受けたものの、前年比5.61%増の実績を上げ、タイ輸出農産品の5分の1を引き受けている――と語った後、「両国の戦略的協力関係は緊密化の度を加えている」と胸を張り、参加した華人有力者に一層の奮起を促したとか。
タイで存在感を強める一方の中国に較べ、我国の影は薄まるばかり。学級会の“青臭い正義”を振り回し日米密約暴きに嬉々として血道を挙げている余裕などないはずだ。 《QED》
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