【知道中国 367回】 一〇・三・念
――四の五の言うな・・・“We love Chairman Mao”なんだ


 『簡明英語語法』(湖北省中小学教学教材研究室編 湖北人民出版社 1973年)

 書名に示されているように、この本は正真正銘の英語文法解説書だ。名詞からはじまり、冠詞、代名詞、数詞、形容詞、動詞、副詞と文法が簡単明瞭に解説されているが、出版時期からいって、単なる文法解説書で終るわけがない。やはり一にも二にも、三にも四にも、五にも六にも、百にも二百にも革命であり政治を求めている。とはいえ、やはり笑えて限りなく楽しい例文が次々に現れる。そこで、思いつくままに拾ってみた。

■冠詞Theの用法に、

Down with the landlord class!(地主階級を打倒せよ)

People of the world,unite!(全世界の人民よ団結せよ)

「固有名詞、物質名詞、抽象名詞の場合に冠詞は不要である」と説明し、

I love Tien An Men in Peking.(私は北京の天安門を愛する)

Imperialism,revisionism and all reactionaries are paper tigers.(帝国主義、修正主義と一切の反動派は張子の虎である)

■疑問代名詞では、

What is work? Work is struggle.(なにを工作と呼ぶのか。工作とは闘争である)

■形容詞の用例をみると、

Chairman Mao is our great teacher.(毛主席は我われの偉大な導き手である)

The sea is deep,but our love for Chairman Mao is deeper than the sea.(海は深い。我われの毛主席に対する熱愛は海よりも深い)

■動詞の項をみると、一般的な過去形の例として、

The October Revolution in 1917 brought Marxism-Leninism to China.(1917年の10月革命は中国にマルクス・レーニン主義をもたらした)

動詞不定形では、

To serve the people is our happiness.(人民に服務することは、我等の幸福である)

未来形では、

Imperialists will be imperialists;they will not change their aggressive
nature.(帝国主義者はとどのつまり帝国主義者であり、彼らの侵略性が改まるわけがない)

■副詞をみると、

Socialism will certainly triumph over capitalism.(社会主義は資本主義に必ず勝利する)

■willの用法では、「willは決心、決意、意志を表す」として、

China will never be a superpower.(中国は断固として大国にはならない)

革命的で激烈な例文は際限なく続くが、いささか辟易としてきたので、この辺で切り上げたい。ところで教育内容もさることながら、やはり興味深いのは、この本出版の狙いだ。

はたして一石二鳥式教育で英語と革命とを同時に学ばせようとしたのか。それとも中国人のアメリカへの憧憬、無条件に近いアメリカ好きを刺激し、英語学習をエサにでもしない限り、若者が革命にソッポを向くようになってしまった危機感から、苦肉の策として出版されたのか。いずれにせよ結論は“Only socialism can save China”だそうデス。  《QED》