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【知道中国 406回】 一〇・六・念
――孫呉抗戦記念館は威容、偉容・・・いや異様だった
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愛国主義教育基地探訪(4-14)
教育局を後に駅に向かう。駐車場も兼ねた駅前広場の大きさは縦・横共に100メール以上はあろうか。広場と同じ幅を持つ10数階建ての新築ビルが、左右から広場を挟んでいる。そのビルの2階部分の壁に掛けられた看板をみると、手前から食雑店、招待所、黒馬美術社、華仁旅店、君来楽狗肉城、華光旅館、田豊招待所、孫呉県大豆協会、中途旅店、星期八旅店、七夕旅店とある。大豆協会とはいうが、聞いてみると、ここも簡易ホテルになる。ということは、このビルは簡易ホテルの集合体といえそうだ。
簡易ホテルとはいうものの、これだけの数だ。いずれ孫呉経由で人の移動が激しくなることを見越してソロバンを弾いているのだろうか。華光旅館の店先で呼び込みをしていた爺さんに聞いてみると、「目下のところは赤字だが、そのうち儲かるよ」とヤケに楽観的に返してきた。中途旅店の看板に小さく電脳間、標準間、普間と書かれているところをみると、電脳(パソコン)が使える部屋もあるわけだ。
それしても、狗肉城(犬肉専門レストラン)に「君が来て楽しむ」とは意味深。この街の住人のみならず、駅に降り立った「君」たちは、この店に「来て楽しむ」・・・犬肉を、である。旅店の星期八もケッサクな名前だ。中国語では月曜日が星期一で、土曜日は星期六。そして日曜日は星期天、あるいは星期日。だから星期八という曜日は存在しないのだが、日本でも最近は25時、26時などという表現が聞かれるから、その手合いだろう。
改めて“簡易ホテル群”を眺め直すと、星期八旅店と七夕旅店との間に場違いな看板が見えた。大きく「孫呉抗戦記念館」と書かれ、右下端に小さく「孫呉地方志館」と。ここが今日の見学コースに予定されている記念館かと思うと、驚くやらガッカリするやら。抗戦記念館というから、壮大な敷地に豪壮な建物がドーンと構え、江澤民が揮毫した巨大坑日スローガンが“熱烈歓迎”してくれるものと心躍らせていたのだが、完全に肩透かし。有り体にいって簡易ホテルの数部屋を間借りしているにすぎないくせに、坑戦記念館を名乗るとは見上げた根性だ。そこで考えた。さて、ここ孫呉における抗戦の相手とは、日本軍、ソ連軍、国民党軍、それとも匪賊・馬賊軍か。それを確かめたくて展示物をみたかったが、早朝だから入口が開いているわけもなく、諦めるしかなかった。
駅舎に到着。前夜11時頃にハルピンを発った黒河行きの夜行列車が到着したところだった。大きな荷物を抱えた客が、次々に降りてくる。タクシーの運転手が駆け寄る。暫くすると、都会風のファッションの女性がやってきたが、客引きの運転手には目もくれず駐車場に置かれたトヨタの最新ランドクルーザーの方に向かう。ドアを開けて待っていた男もまた、成金趣味の身形。どうやら、今の時代の“勝ち組一家”のようだ。
駅の待合室の壁には、大きな鉄路旅客列車時刻表と全国鉄路客運営業站示意図(全国主要鉄道路線図)が掛けてある。時刻表を見ると、孫呉を通過する旅客列車は黒河・ハルピン間を走る普通、快速、特快の1日3往復のみ。示意図は全国と銘打っているだけあって台湾部分も書かれている。台北、新竹、台南、高雄、花蓮、基隆などを結び台湾を一周する路線だが、海南島を含む大陸部分の駅が実線で結ばれているというのに、どうしたことか台湾だけは点線だ。台湾との統一はまだ実現していないと訴えたいのだろう。 《待続》
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