【知道中国 483回】        一〇・十一・念

     ――これが“人民芸術家”への道だ

     『千歌万曲献給党』(上海人民出版社 1971年)    

 文革最盛期の出版だから、表紙を開けると極く当然のように「我々の文学芸術はすべて人民大衆のためのもの。なによりも労働者・農民・兵士のためのものであり、労働者・農民・兵士のために創作し、労働者・農民・兵士が利用するのだ」との『毛主席語録』の一節が掲げられている。次の頁をみると、「偉大、光栄で正しい中国共産党誕生五十周年(1921-1971)に謹んで捧げる」の献辞。つまり、この本には労働者・農民・兵士が「偉大、光栄で正しい中国共産党誕生五十周年」を祝して書き上げた詩の数々が収められている。そこで、いくつかの作品を読んでみようではないか(題名後のカッコ内は作者の職場と氏名)。

■偉大なる導師は航路を指し示す(上海市海運局材料供応站 周成)
  毛主席が航路を指し示せば
  我らが乗る巨艦は航路を迷うことはない
  風に乗り波を蹴立て革命を推し進め
  五洲四海(せかい)に春光(かくめい)を送り届けよう

■万歳中国共産党(金山県朱行公社 顧吾浩)
  東の空から真っ赤な太陽が昇り
  数限りない星が金色の光に包まれる
  天地をどよもす歓呼の声
  万歳、中国共産党!

■毛主席、建党のため上海へ(金山県生産資料公司 金暁東)
  毛主席が党を打ち立てるべく上海へ
  暁を破り汽笛が大地を揺るがす
  旭日が浦江(しゃんはい)の流れを赤々と染めると
  神州(ちゅうごく)は真っ赤な太陽を迎え微笑む

■党は歴史の機関車(上海鉄路分局東車両段 汪錫麟)
  車輪は轟々、汽笛は吼える
  党は歴史の機関車だ
  疾風怒濤の50年
  昇る曙光は全球(せかい)を照らす

■偉大な真理は永遠に(金山県廊下公社 陸恵栄)
  革命の稲妻は宇宙を震わせ
  反帝の怒火(いかり)に全球(ちきゅう)は燃える
  鉄砲からこそ政権が
  偉大な真理は千秋(えいえん)だ

 いくら読んでも限がない。どこを切っても味も絵柄も変わらない金太郎飴と同じで、色合いは単調の極み。どの作品を口にしても、感興が湧かない。「我々の文学芸術」は決して難しいものではない。誰でも、どこでも簡単に生み出せる。なにはともあれ毛沢東を昇る旭日、輝く旭日に見立てさえすれば、「我々の文学芸術」は一丁上がり、となる。  《QED》