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樋泉克夫教授コラム
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~川柳~
《站起来 等了好耐 有困難》⇒《決起せよ 判っちゃいるが 難しい》
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【知道中国 531回】 一一・二・念四
――あの小さくも健気なラッパ卒は、いまどこに 『雪山上的号手』(趙鷔・秦大虎 上海人民出版社 1965年)
ボクの名前は于魯紅。14歳の号手(ラッパ卒)だ。だけど、子供だとバカにしないでください。毎日、ラッパを金ぴかに磨き上げ、柄のところに赤い布を結びつけ、そいつを背中に威風堂々と行軍し、全身全霊を革命のために捧げ、勇猛果敢に戦闘に参加してきたんです。兵士たちは親しげにボクを「小号手(小さなラッパ卒)」と呼んでくれるんだい。
辛い長征もなんのその。部隊は小休止し体力と装備を整え明日からの難関の大雪山越えの準備です。ボクは近在の村へ行って、厳寒の行軍にとって必需品の唐辛子と焼酎を調達しました。冷えた体を芯から暖めるには、これが一番なんです。「大雪山は豪雪に加え強い風。さらに空気は希薄。だが革命的英雄主義を発揮し、団結して闘い困難を克服し、勝利のうちに大雪山を越えようではないか」と、部隊長の声が。ボクも革命的英雄主義者だい。
戦友で病弱の江戦雲の手を引きながら、一方で木を掴み峻険な山道を登ります。部隊は、まるで一振りの宝剣のように一直線になって大雪山の頂を目指して進みます。すると突然に強風が狂ったように吹きはじめ、ついで横殴りの猛烈な雪。あっと今に周囲は真っ白で、なにも見えません。「団結だ、戦闘だ、隊列から落伍するな」――部隊長の叱咤激励の声に、ボクも勇気を振るい起こし、江クンの手を引いての雪中行軍です。負けないゾ。
山が高くなれば雪も深くなります。ボクらは「堅固な革命的毅力」を発揮し、一歩一歩と山頂を目指します。山頂にたどり着いた部隊の先頭からの「頑張れ、同志諸君」の声に励まされ、ボクは江クンに「ガンバレ、大雪山に勝つんだ。大雪山といったって紅軍兵士にゃ、かないっこないんだ」 やっと山頂に辿りついたが、風はさらに強く、鶏の卵大の雹がボクらを襲う。ボクらは進むことも退くこともできず部隊から取り残され、吹雪の中に立ち尽くすしかなかった。 ボクらが悪戦苦闘しながら雪道を進んでいた時、近くを通りかかった別の部隊の隊長の「号手がみつからず、我が部隊の所在地点連絡不能」との声を聞き、ボクは雪の中から力を振り絞って「同志、ボ、ボクは・・・」
ボクの声を耳にした部隊長がやってきて、体全体を雪に包まれながらもラッパを高々と掲げるボクを発見したのです。ボクは寒さで切れてしまった唇もなんのその。部隊長の命令を受け、力の限りラッパを吹きました。ラッパの音が伝える「部隊長は山頂に到達せり。諸君の現在地を伝達あれ」の信号は轟々たる吹雪をものともせず、全山にこだましました。ボクのラッパの音に勇気付けられ、多くの兵士が部隊長に合流すべく山頂を目指します。
突然に途切れたラッパ。精も魂も尽き果て、ボクは気を失ってしまったんです。「小同志、しっかりしろ」。部隊長の腕の中で気がついたボクは「隊長、戦友の江クンが・・・」
この時、ボクの部隊の部隊長が、ボクらを探しに山頂に戻って来てくれたんだ。江クンも雪の中から救出された。「貴下の部隊の小号手の格段の軍功により、我が部隊は勝利のうちに大雪山越えを達成せり。感謝の意を表す」。すると我が部隊長は力強く、「我らが毛主席の英明なる指導の下、抗日の前線に赴き、共に侵略者を打ち破ろう」 文革開始1年前の1965年出版のこの絵本で育った世代は、いま50代後半に差し掛かった頃か。吹雪の大雪山を越えた小号手に励まされながら、金銭万能の現在を雄々しく生きているはず。「カネカネカネカネーッ」・・・進軍ラッパの音が聞こえてきませんか。《QED》
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