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樋泉克夫教授コラム
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~川柳~
《什皆有 中国品牌 還無有》⇒《紛い物 世界ブランド 道遠し》
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【知道中国 551回】 一一・四・初三
――書式統一・用語指定・監視徹底・思想統制・・・徹底独裁
『常用応用文写作分類辞典』(李白堅主編 上海大学出版社 2004年
この本は現代中国文章作成手本とでもいおうか。たとえば「信函(書簡)類」の項目をみると、一般的な私信のほかに公用、専門、感謝、申請、紹介、求職、慰問、決意表明、保証、提案、招請、招待、自己推薦、検挙、告発など――内容によって異なる書式や文体、ことば遣い、専門用語、叙述形式などが実例を示しながら懇切丁寧に示されている。信函の他、広告、法律、行政、経済、啓事、条据(メモ)、礼儀、新聞、説明、申請文書、校園(キャンパス)文書など、一般社会生活で日常的に必要と思われる文書が細大漏らさず納められている。
目下の中国ではハイテク機器を駆使した意思伝達システムが都市を中心に全国規模で発達し、共産党による鉄壁のメディア統制に風穴を開けようとしているゆえに、当局との間で激しい攻防が展開されていると伝えられがちだが、じつは手で書くという究極のローテクによる伝統的思想統制も厳然として行われているらしい。その一例を、主に大学生が扱う校園文書の項目のうちの「思想匯報(報告)」に見ておきたい。
先ず「思想報告は個人が自己の活動や思想信条を書面で組織に報告し、組織に対し時宜に応じて自らの思想傾向の理解を求め、組織の指導を仰ぐものである。入党を求める積極分子は自らの思想・工作・学習情況を組織に対し積極的に表明し、自らの組織概念を自覚し、思想的覚悟を高めなければならない。一般的には少なくとも半年に1回の頻度で口頭、あるいは書面で報告すべきである。入党を果たした党員もまた、自らの思想情況を常に党組織に然るべく報告せよ」と教導した後、報告すべき内容を細かく指示する。
①マルクス主義の基本理論、党の基本知識や重要文献に関する学習成果と重要活動に参加して体得したこと。 ②党の路線・方針・政策・中心任務・工作・問題に対する見解と態度。 ③内外で発生した重大事件の本質に対する認識と政治的立場。 ④日常生活において個人的利益と集団・国家の利益との間で矛盾が生じた際の対応と処理方法。 ⑤外地における工作・学習において遭遇した思想と認識の問題。 ⑥当面の思想・学習・工作における進歩と退歩の程度、自らが求める進歩の程度と信念。 ⑦自らが報告すべきと考える党組織に対す思想情況。
次に書式が説明されているが、書き出しの行の中央に「思想匯報」と大きく表題を示し、一行下げて「敬愛的党組織」の6文字を掲げ、かならず句点を打つ。次の行から上に示した7つの点を軸に「自らの学習・工作・生活情況を結びつけ、真の思想情況を党組織に包み隠すことなく申し述べ」た後、「党組織に対し批判・援助を懇請致します」と結ぶ。最終行の右側に、氏名と報告を記した年月日を記す。
「党の綱領・基本理論などを十二分に理解した上で自らのことばで、形式主義に陥ることなく自らの情況を簡単明瞭に綴れ」と注意の後、「インクで自書。印字不可」と強調している。ということは、その報告が本人の書いたものである明白なる証拠を残し、後々の言い逃れを防止しようというのだろう。まさに自筆の思想的自白調書ということだ。
個人的文章の隅々まで徹底監視。完璧な思想警察。まさに独裁は芸術の域に・・・。《QED》
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