樋泉克夫教授コラム

~川柳~ 
《没有用 捐架飛機 朝鮮戦》⇒《戦闘機 寄付し諂う 役者かな》
■(付録)
①おい菅よ酌み交わそうぜ別杯を 
②おい菅よチビチビ飲(や)るな別杯を 
③おい菅よ一気に飲み干せ別杯を 
④菅ざまし確かに後から効いてくる

  【知道中国 587回】            一一・六・仲四

     ――嗚呼、振り放け見れば・・・

     『政治経済学基礎知識』(《政治経済学基礎知識》編写組編 上海人民出版社 1974年)
  
 この本は「資本主義部分」(上巻)と「社会主義部分」(下巻)の2冊からなり、「毛主席の『青年世代の成長に関心を持つべきだ』とのお教えに基づき、数多くの下郷上山(農山村に入植)した知識青年が自ら学ぼうとする要望に応ずべく、特に編集し出版した」とされる青年自学叢書の一部である。四人組が猖獗を極めた時期、しかも四人組御用達宣伝機関であった上海人民出版社からの出版とくれば、硬直した議論が過激に展開されてしまうのも、致し方ないことだろう。凡て時代がなせるワザ、ということで・・・。

 冒頭で「青年がマルクス主義に通暁し、修正主義批判を深化させ、自覚的に世界観を改造し、より素晴らしい戦いを進め、より健康的に成長するためには政治経済学を学ぶべし」という「偉大な領袖毛主席の数次に及ぶ教導」を掲げ、社会主義の素晴らしさを讃えてみせる。そこで、その“論証”の跡を追ってみたい。

 人類は原始社会、奴隷社会、封建社会と進んだ後に商品と価格によって左右される資本主義社会に突入したことで、資本家と労働者、搾取と被搾取の関係が生まれ、社会における富者と貧者との格差は拡大するばかりである。資本を蓄積することで資本家は社会を支配し、富を収奪されることで労働者は資本家の奴隷に堕す。資本主義制度は必然的に持つことになる不況という不治の病を克服するため、帝国主義化への道は避けられない。超独占資本主義でもある帝国主義は腐って野垂れ死にする直前の資本主義であればこそ、それは社会主義革命の前夜を意味する。

 ソ連は社会主義のカンバンを掲げるが、実態はアメリカ帝国主義の軍門に下った社会帝国主義であり、だからこそ世界の労働者階級が打倒すべき“犯罪的存在”なのだ。
以上の上巻「資本主義部分」を受け、下巻「社会主義部分」が展開される。

 社会主義はプロレタリア階級独裁という人類史における新しい時代を切り拓いた。社会主義生産関係の基礎は社会主義公有制であり、農業の社会主義化こそが強固な社会主義社会の基盤だ。社会主義公有制は不断の闘争を経て強化され発展し、社会における生産の性質を根本的に変化させ、より速く、より効率的な発展をもたらすことになる。計画経済によって、社会主義下の国民経済は農業を基礎に工業を導き手として発展するが、厳格な節約と監査・監督制こそが経済運営の重要な原則である。

 生産物の交換と貨幣の流通、国民収入の正確な配分と再配分は、国家と集団と個人の関係を正確に処理する要であり、かくして「各尽所能、按労分配(能力に応じた分配)」が可能となる。対外関係における基本は「相互援助、互通(相互の援助と融通)」で、対外的な経済援助は社会主義の国際義務だ。

 このように生硬極まりない議論が展開された後、最後に社会主義から共産主義への道は必然であり、共産主義は必ずや実現されなければならないという結論に至り、長大な論文の最後を「マルクス主義、レーニン主義、毛沢東思想の勝利の旗を高く掲げ、全世界のプロレタリアと連帯し、全世界の抑圧された人民と圧迫された民族と手を結び、『決意し、犠牲を恐れず、万難を排し、勝利を獲得しよう!』」と締める。

 以上が社会主義に狂奔していた時代を知るための「基礎知識」だが、ならば超独占資本主義段階にある現在の中国では、これから社会主義革命が始まるわけだ。納得デス。《QED》