樋泉克夫教授コラム
~川柳~
《隣教隣 社会学等 不能留》⇒《社会学 とっとと消えろ 目障りだ》
*53年、毛沢東は
全国
大学
における社会学の研究・教育を不要とした
【知道中国 593回】 一一・六・念六
――困った困った小林さ・・・いや違う、困った困った胡錦濤
ついに中国の人口は13.4億人に達した。一人っ子政策から逃れるため、戸籍のない黒戸子と呼ばれる第2子、第3子が少なくないはずだから、実態は13.4億人超だろう。一方、共産党員の数だが、2010年末の党員総数が前年比227万4000人増の8026万9000人に達したことを明らかにした。09年半ばの党員数は7500万人余だったはずだから、1年半ほどで527万人ほどの増加だ。人口超大国に世界最大の共産党とくれば、怖いものなし。
ここで党の歴史を遡って党員数の推移をみておくと、90年前の1921年の結党時が50人余で、第1回党大会参加者は僅かに13人。49年の建国時が448万8000人。天安門事件当時が4800万人余。ということは結党から90年で160万5380倍、建国から60年余で18倍、天安門事件から1.7倍ほどだ。現時点の内訳は女性が22.5%、少数民族が6.6%。大卒以上は37.1%。職業別では、最多の農民が30.4%で、企業管理・専門職が22.9%。以下、労働者(8.7%)、公務員(8.5%)、退職者(18.5%)。党員の高齢化と新規党員の高学歴化が進んでいるようだが、経済成長と共に社会全体の高齢化と高学歴化は必至という先進諸国の歩みを考えれば、共産党もまた世界の趨勢から逃れることはできそうにないわけだ。
ここで中国社会における共産党の役割を考えてみると、やはり党国体制の下で党が国家・社会経営に関する全権限を一元的に掌握してきたことが挙げられる。中華人民共和国は毛沢東が率いた共産党が1949年に造った国家だが、国家が在って党があるわけではない。党がなければ国家もありえなかったのだ。つまりエンジンがなければ車が動かないように、党がなければ国家は動かない。国家経営の全権限は党に一極集中することになる。かくして、①国家を経営するノウハウと経験と人脈を持っているのは党員だけ。②49年に唯一の合法政府として政権を掌握して以後、党は国の機関の隅々まで党員を配し全ての公的機関を統御してきた。③国内の全メディアを中央宣伝部の統制下に置き、全情報を一元的にコントロールしている。④党の意向を、民間の企業経営でも貫徹させてきた――そこで党員を、中華人民共和国という巨大帝国を取り仕切る官僚と看做すことができる。そのうえに「公財私用(公のモノは俺のモノ)」という中華伝統官僚気質は連綿と、確固として生きている。ならば、金満共産党の党員になって甘い汁を吸いたくなるのは人情の常だ。
歴史的に中華帝国は完備された官僚機構を持ち、膨大な官僚によって経営されてきたと思われがちだが、それは誤解。たとえば18世紀末時点の清朝をみると、3億人ほどの人民を治めていた中央官僚の数は、僅かの2.2万人。つまり官僚依存度が極端に低い社会であり、“小さな政府”だった。いいかえるなら1.3万人強の人民で1人の官僚を養うわけだから、人民にとっての負担は極めて軽かったはず。つまり中華人民共和国は、封建王朝の清朝など比べものにならないほどの“超巨大政府”を戴く超巨大官僚国家ということになる。
8026万9000人の党員数に対し13.4億人では、党員1人を16人ほどの人民が支えるわけで、支える側の負担は清朝時に較べ格段に重いが、監視の目は行き届く。党員の増加は共産党による国家経営の厳密化を意味することになるが、人民にとっては負担増に繋がる。
経済大国化で共産党権力は拡大し、甘い汁にありつこうと党員が増加する。そこで人民の負担は増すから、負担増を嫌う中国人は世界に飛び出し、中華身勝手ルールをまき散らし世界中が大迷惑する。かりに中国バブル経済が破裂したら、これまた確実に世界は空前の大混乱に陥るだろう。どっちに転んでも、ドダイいいことはない・・・ヤレヤレ。《QED》