樋泉克夫教授コラム

~川柳~
《打麻雀 大吃大喝 猪幹部》⇒《餓死絶えず なれど幹部は 飽食を》
*大飢饉で多くの餓死者がでているにもかかわらず、地方幹部は遊び、たらふく食べ、猪(ブタ)の如く肥えていた。地方幹部は「土皇帝(田舎の皇帝)」と呼ばれ、当時も農村住民の生殺与奪の権を握る絶対権力者だった。

  【知道中国 614回】            一一・八・初七

     ――日本の中国人社会・・・いったい彼らは何をしているのか

 いったい合法・非合法合わせてどれほどの中国人が東京とその近郊に住み、何を生計の手段としているのか。その実態は判然とはしない。とはいえ、判然としないところが、また彼らの特徴ではある。その判然とはしないところを承知のうえで、彼らにとっての有力な情報源である漢字新聞を眺め、彼らの生活の一端を覗いてみると・・・。

 いま手許には「東方時報(6月2日/805号)」、「華風新聞(6月3日/587号)」「網博週報(6月3日/252号)の3紙がある。共に週刊紙だ。歴史の古い「東方時報」の体裁は日本の新聞と同じで全28頁。残りの2紙は共にタプロイド版で「華風新聞」が48頁、「網博週報」は56頁。記事内容は主として中国や日本の内政と外交、教育事情に加え日中芸能情報などで各紙とも大差なしといったところ。「本報訊」「本報記者」と記して独自取材を強調する記事もあれば、日本の新聞や週刊誌のパクリ記事も見られる。ついでにいうなら、3紙とも同じく250円――そんなことはどうでもいい。それというのも、この種の新聞の特徴は記事内容になく、じつは広告にこそあるからだ。

 そこで新聞紙面に占める広告の割合を見ておくと、「東方時報」は1頁大の全面広告9頁を含め紙面全体の59%を広告が占め、「華風新聞」は全面広告が21頁で広告は紙面全体の69%、「網博週報」は全面広告が29頁で広告は紙面全体の73%。だから読者が250円払って求めるのは広告ということが判るだろう。

 携帯電話、電子手帳、コンピューターなどの電子機器、国際電話カード、格安旅行、航空券、不動産、美容院、中華料理店、内装工事店、引越し店、中古家電販売店などに加え調理師やら各種アルバイト募集の広告もあるが、最も数が多く目に付くのが「風俗小姐」「出張小姐」「エステ小姐」「座台小姐」「マッサージ小姐」「按摩小姐」「純清整体女性」といった風俗関連広告だ。

 たとえば「世界小姐 月収150万 有自信、漂亮的小姐、年齢不限、免費形象設計、技術指導、免費提供寮、日保4-6万、及酒店小姐 待遇可相談」。この店は「池袋西口北口1分」にある。容姿に自信があれば年齢不問で、衣装と化粧に加え住居まで店側が提供。日給は4万から6万が約束され、月収で150万というのだから、この不景気に豪勢な話だ。同じような条件の広告を出している店は池袋、新宿、大塚、上野、銀座、小岩、錦糸町、八王子、拝島、町田、市原、横須賀、藤沢などと都内及び近郊が多いが、福岡、岡山、京都、愛知、三重、富山などにも。「日本会社経営、安心」の文字も見受けられるが、ということは「日本会社経営」ではない店は「安心」して働けないということだろう。

 この種の広告の内容はどれも興味深いが、その一例を挙げると、「郷下旺店、客人衆多、容貌、身材有自信者優先、郷下客人好作、作息時間可自由游玩 軽松愉快。29才。月収120-200万」。この店は三重県の四日市にあるようだが、それしても「田舎ですが繁盛店で客多し。容貌・スタイルに自信のある方を優先します。田舎の客はチョロイもの。休憩時間は行動自由。気軽で楽しい職場。29才まで」で「月収120-200万」とは・・・オイオイ。

 風俗関連の次に多かったのが「永住、定住、帰化申請」など「入管申請事務」が専門の弁護士や行政書士の事務所の広告。多くが日本定住の法的保障を求めているということだ。

 西の大陸に高速鉄道事故トホホ処理あれば、東の日本に「風俗小姐」あり。大袈裟ではなく日本は、そして世界は“生身の中国人”とどう付き合うべきか。いまこそ真剣に考え対処すべきだ。だが異文化共生なんぞは百害あって一利なし。断々固拒否である。《QED》