樋泉克夫教授コラム
~川柳~
《大炮仗 解放台湾 大家来》⇒《台湾を 攻めて奪るのは いまが時期》
*58年8月23日午後6時30分、人民解放軍は台湾側の金門、馬祖島に猛烈な砲撃開始。台湾側は断固として死守。
【知道中国 618回】 一一・八・仲二
――いやはや、お盛んなこと・・・ゴ同慶の至りでゴザリマスル
『中共 海外情婦榜』(張明福編著 聨合作家出版社 2008年)
ロスアンゼルスからルート60を車で東に30キロほど走った辺りの荒野を、漢字名で「玉宇」と名乗る不動産開発会社が開発して超高級住宅地に生まれ変わらせたのは90年代半ば。同じ頃、広東、東北三省、浙江、山東、江蘇などの民間企業によるアメリカでの株式上場ブームが起こり、この高級住宅地に若い妙齢な中国女性が住み着くようになった、とか。
昼は静まり返っていた家々も、夜の帳が降りる頃になると麻雀牌の音で騒がしくなる。買い物は超高級スーパーマーケット、乗り回すのは超高級車、立ち寄るのは超高級レストラン、身につけるのは世界の超一流ブランド、昼は語学学校での英語学習、肩書きは某々公司在米支店総経理などだが、マトモに仕事をしているようには見えない。豪華な家具調度で飾られた家には可愛らしい子どもいるが、あやしているのは子育て専用の女中――こんな点が共通項。じつは豪邸の主は共産党幹部や在米中国企業経営者の愛人だった。そこで、この高級住宅地を、誰いうことなく「二奶村(めかけ村)」と呼ぶようになる。
一方、カナダ太平洋岸の大都市で中国人移民に乗っ取られたとも形容されるほどに中国人が多く住むバンクバーには、「大奶屯(やもめ村)」と呼ばれる地区があるそうな。住人の生態は二奶村と似たようなものだが、こちらの住人の多くは「中年怨婦(欲求不満の中年おばさん)」が多い、とか。
この本は、そんな脂粉の香り漂い、欲と得に紛れた奇妙な村の探訪記であり、であればこそ金満中国の“もう1つの真実”がありのままに描き出されている。
「怨んでも怨みきれない現代の始皇帝であり真っ赤な太陽がのさばっていた20数年の間、自分だけは妻、妾に加えつまみ食いを愉しんでいたものを、それが他の幹部には許されなかった」。だが経済成長によって、「包二奶(めかけを囲うこと)」に「緑灯(ゴー・サイン)」が点ったのである。かくして「党と政府の強力な後ろ盾をえて、『二奶』産業は雨後の筍のように成長し、幹部や企業家は『愉悦の先駆者』となった。・・・時に『二奶』の家で満ち足りた生活を満喫し、親愛の情を込めて彼女の母親を『お母さん』と呼び、『二奶』との間に生まれた我が子をベタベタに可愛がる」。ここで著者は、そういった生活を送る「幹部や企業家」を、「党が目指す『尊老愛幼(年寄りを敬い、幼子を慈しめ)』という教育方針を長年受けた指導者としての素質を十分に発揮している」と皮肉る。
国内で二奶を囲っては問題も起こる。だからアメリカに住まわせることになるわけだが、留学生を“現地調達”する場合もあるようだ。国内で二奶との生活を満喫したい剛の者は、長年連れ添ってきた“糟糠の妻”を太平洋の向こうの側の大奶屯に送り込み、後は知らん顔でシケ込もうという寸法だ。
じつは江沢民が権力を掌握した90年代以降、中国では資本の海外逃避(Capital Flight)が盛んになり、「多くの幹部は様々な方策を講じて国内で手にした財産を外国の銀行に蓄え、家族は国外で安穏な生活を送っている。彼らにとって中国とはカネ稼ぎの場所でしかない」。「彼ら幹部は中国の権力の舞台から引き下がるのではなく、権力を乱用して莫大な富を蓄えた後、彼らによって散々にシャブリ尽くされた中国を捨てるのだ。・・・江沢民をトップとする中共の政治人物は世界で最も政治的責任感を持たない統治集団だ」と糾弾する。
「最も政治的責任感を持たない統治集団」では鳩・菅・X民主党政権も負けてはいませんが、それにしても北米各地に二奶村や大奶屯・・・流石に剛毅なもの。頭が下がります。《QED》