樋泉克夫教授コラム

川柳>>>>>>>>>>>
《去戦争 二不怕死 取勝利》⇒《戦争に ”勝利”し苦労が また増えた》
*1963年2月、対印国境戦争前線指揮官から「一に苦労を厭わず、二に死を恐れずの精神で戦った」と報告を受けた毛沢東は、以後、事ある毎にそのスローガンを使い、全人民に自己犠牲を強要した。

  【知道中国 635回】            一一・九・初九

     ――問題山積・前途多難・唯我独得・・・猛進無罪

      『中国無法偉大的50個理由』(左岸文化事業公司 2010年)

 この本は、共に中国滞在が長いイギリスとカナダ出身者が論じた深刻な現代中国論だ。50の問題点を指摘し、中国が経済超大国にはなれても、真に偉大な国家になれない理由を論ずる。以下、必要最小限の解説を加え、50項目の問題点を箇条書きに挙げてみた。

●少数民族を抑圧(漢族優位主義を断固として貫徹・拡大)/●5つの危険社会層の存在(貧困層、一人っ子層、農民出身肉体労働者層、犯罪者・犯罪予備軍層、独身男性層)/●幼児・若年層に対する人権無視/●過激なまでの学歴至上主義の横行/●「クリントンのいない中国」(指導者に対する素朴で熱い支持がない)/●メディアと情報の一元的支配(権力に不都合なメディアを排除・抹殺)/●ニセモノ・パクリ天国/●無神論の横行(民心は殺伐として空虚のまま)/●世界最大のオモチャの兵隊(装備は整ったようだが、人民解放軍に近代戦を勝利する実力はない)/●神話とデタラメで建国された国家(49年の建国にまつわる歴史は真実ではない)/●天文学的レベルに達した貧富の差、社会の格差/●横行する規則・法令無視/●極限まで進む文化遺産の破壊/●ガラスのようにひ弱な子どもの群(一人っ子政策のお陰で、こどもは甘やかされ放題でワガママに)/●ただ同然の労働者の命(労働者は使い捨て)/●全土を覆うゴミの山/●刹那的なサブ・カルチャーに耽溺・拘泥する若者層)/●謝罪戦争(日本とユダヤ人虐殺を行ったナチを同一視するのは「中国による根本的な歴史の歪曲であり、復仇心の煽動だ」)/●磕頭外交(対等の外交関係という原則を無視し、無理難題を承知させる。中華思想の悪しき影響)/●自殺の急増(その背景にあるのが横溢する利己主義と解体する社会)/●ネット空間への権力の介入と峻厳な規制/●独自な科学技術を生み出しえない(先進国で暗躍する軍事・産業スパイ)/●人口の高齢化/●激化する頭脳流出(海外に出た優秀な人材は帰国しない)/●目を覆うばかりの自然・環境破壊/●都市で働く元農民労働者が置かれた劣悪な環境/●極端なまでの「金メダル信仰」(北京オリンピックに象徴される金メダル至上主義)/●動物虐待/●社会の底辺層による犯罪の急増/●依然として低下しない社会の文盲率/●台湾による民主主義の浸透/●肥満と健康問題/●喪失した真の国家目標/●急増する幹部の犯罪(中国経済の急成長に伴って犯罪産業もまた急成功を遂げ、拡大一途)/●中国語が抱える問題(新概念の表記が困難。北京当局が海外に急増させている中国語学校=孔子学院の政治宣伝機関化)/●多くの周辺諸国との間の国境紛争/●世界ブランド化しない中国ブランド(世界の工場の実態は世界の下請け工場でしかない)/●すべてが「巨大」(人口、産業、公害、環境破壊、犯罪、自然災害・・・)/●性・風俗犯罪/●共産党一党支配下に存在する資本家(まさに矛盾そのもの)/●グローバル化し頻発する新型病原菌への無策(無知・身勝手・保守性・面子重視が対策の遅れ、被害の急拡大を誘引)/●中国式傲慢(これはもう解説の必要なし)/●極端な男性社会/●国を挙げての賭博場化(博打好きは民族性)/●ナポレオン主義(増大する解放軍の政治的発言力)/●醜いアメリカ人化(中国への嫌悪感は諸外国で増大)/●限界点に達しつつある経済成長最優先社会/●医療の格差に起因する医療犯罪/●異常な女性蔑視/●自由なき社会・・・

 まさに満身創痍。いつ失速しても不思議ではない。だが、なにかに突き動かされるように、脇目も振らず驀進を続ける。やはり“大中華帝国の幻影”を追い求めているのだ。《QED》