樋泉克夫教授コラム

川柳>>>>>>>>>>>
《取勝利 学習雷鋒 好榜様》⇒《自己犠牲 願ってもない 見本なり》
*1962年8月15日、瀋陽軍区の若き工兵・雷鋒が列車事故を防ごうと自らの命を擲ったとか。かくて63年3月、毛沢東の音頭取りで「向雷鋒同志学習(雷鋒同志に学べ)」との自己犠牲キャンペーンが全国展開される。
  【知道中国 636回】            一一・九・仲一

     ――中国は偉大な国家への道を威武堂々と歩んでいる・・・そ~です

     『中国有法偉大的50個理由』(朱英東 珠江書屋 2010年)

 著者は「欧米ジャーナリスト2人の共同執筆による『50 Reasons Why China May Never Be Great』を一読したが、事実を捻じ曲げ、中国のイメージを失墜させようという意図がアリアリだ。彼らのデタラメを許しておくわけにはいかない。公正を装う悪意に満ちた主張を徹底的に糾弾し、正しい中国像を内外に明らかにしたい」と語る。

 著者の糾弾する『50 Reasons Why China May Never Be Great』の中国語訳が『中国無法偉大的50個理由』(第635回を参照)だが、この本では「50 Reasons」のそれぞれに詳細な証拠を挙げて論駁している。著者が論拠とする証拠は膨大であり、それだけに全体像を示すことは困難だ。そこで誠に残ではあるが、興味深い若干の項目を選んで紹介しておくことに止めておく。

 ●少数民族の生活向上に努めている=歴史的に、偉大な中華民族は漢族を中軸に多くの少数民族によって構成されている。確かに人口面では漢族は圧倒的だが、中華民族としては対等だ。少数民族から固有の言語を奪い中国語を強要し、一種の民族浄化策を行っているという批判が聞かれるが、それは悪意に満ちた誤解だ。少数民族が自らと漢族の2種類の言語を身につけることは、少数民族が自らの生活空間を拡大し、極めて優位な経済情況にある漢族との交流を通して立ち遅れた社会環境を改善させるためには必要な措置だ。

 ●学歴至上主義ではなく、多くの若者に高等教育の機会が飛躍的に増大した=大学生の数をみると、108万人(99年)、275万人(2002年)、570万人(07年)。08年には559万人が卒業し、約600万人が入学。06年に中国の大学を視察したアメリカのエール大学学長は「今後の15年間、中国の大学にとっての最大の課題は批判的能力をみにつける教育にある」と力説していた。だが中国では「毛沢東理論」「鄧小平理論」「江沢民理論(三個代表論)」「中国革命史」といった世界の大学に類例を見ない独自な教育を徹底しているので、同学長の主張などは杞憂に過ぎない。“小さな親切、大きな迷惑”というものだ。

 ●中国の指導者は謹厳実直であり、精気に溢れ、圧倒的信頼を集めている=己を捨てひたすら国家・人民のために励む中国歴代指導者に、欧米諸国の最高指導者が必要とされる芸能人的人気を求めるのは無理な相談だ。一国の政治指導者が備えなければならない最大の資質は識見・決断力・統率力・品格だろう。その凡てを備えている中国の指導者が、クリントンが犯したような破廉恥な性的スキャンダルを起こすことなどありえない。

 ●ニセモノ・パクリ天国ではなく、極めて高い創造力が発揮されている=紙、印刷術、火薬、羅針盤は漢族の発明だ。宋代に沈恬が著した『夢渓筆談』には先進科学に通じ、現代のハイテクの先駆をなすような科学知識が満載されている。この事実をみただけでも、現代科学技術のオリジナルが中国にあることは明白だ。中国をニセモノ・パクリ天国というのは、歴史に裏打ちされた中国の確固たる先進科学思想に対するヤッカミというものだ。

 ●規則・法令無視ではない。臨機応変という徳目の発揮である=一般に未体験の事態が発生した場合、諸外国では法令に書かれていないとか想定外とかいって当事者責任を回避する傾向が強い。だが中国では、それは断固として許されない。我が国指導者は規則・法令遵守ではなく、なによりも事態収拾を第一義に考え積極果断に決断し行動しているのだ。
 ――確かにモノはいいようだが、牽強付会で身勝手の度が過ぎませんかネエ。《QED》