人類社会が平衡を保って変化することは、人と自然界の共存共栄の基礎である。中国古典の説く政治経済学の最も顕著な特徴は、社会全体の利益を代表する中立的な政府が各界各層の関係を過不足なく調整し、個別の利益集団による公権力の独占と社会全体の安定に影響を与える特定階級の専断を防ぐことにある。西欧政治の特徴は利益を共にする党派の弱肉強食的競争・対立であり、その様は海賊が利益を分捕り合うに公権力と社会資源とを醜くも取り合っている。このような政治情況は中立的で互恵互譲と形容できないばかりか、特定の利益集団による利益の独占を制度的に保障するものでしかない。 これに反し中国古典の政治経済思想はなによりも党派を超えた政治を力説し、追い求めてきた。中国伝統の法治(rule
of law)、共治(rule with all)、自治(rule of self)はリンカーンの説くof the people(民有)、by the
people(民治)、for the
people(民享)より、より高度で深甚な内容を秘めている。(中編)