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樋泉克夫教授コラム
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【知道中国 793回】 一ニ・八・念一
――公道不公道・・・自由天知道
ここ数日、香港の新聞各紙は一面全体を使って中国における反日運動の情況を詳しく伝えている。運動参加者が掲げるプラカードに書かれた反日スローガンを拾い読みしていると、なにやら不思議な思いに駆られてしまう。
「小日本(日本に対する蔑称)は釣魚島からトットと出てゆけ」「釣魚島は中国のものだ」「我に銃を、砲を。立って釣魚島を守るぞ」「日本帝国主義、打倒」「日寇を駆逐し、我が中華の神威を宣揚し、日本による中国領土の侵略・占有に反対せよ」「我が華夏(ちゅうごく)を侮辱するなら、遠路なれど必ず誅すぞ」「領土主権、寸土も守れ」「南京の痛み、釣魚島を守れ」「我が中華を愛し、日本製品をボイコットせよ」「我が魚釣島を還せ」「中華の振興は一人一人の責務だ」などは常套句といったところ。先ずは“穏当”な表現だ。
一方、「釣魚島への出兵を政府に強く要求する」「政府の不作為に抗議する」といった政府の対応の軟弱さへの抗議も見られるが、「日本人に出遭ったら、必滅だ」「腐ったヤツラを叩き出し、政府にヤキを入れ、日虜を駆逐し、琉球を取り戻せ」「直ちに日本と断交し、宣戦を布告し、核を使って東京を攻撃せよ」などといった類の“勇壮”なものもあった。かくして「全土の壮麗なビルをすべて墓石にしてもいい、日本人を皆殺しだ。大陸に草が生えなくなってもいい、釣魚島の奪還だ」と、“悲壮な決意“はエスカレートするばかり。
以上の表現は“想定内”だったが、「鬼子(日本人に対する最も激しい蔑称)が我が釣魚島を奪うなら、鬼子の親娘(カーちゃん)を×××まうぞ」には正直言って開いた口が塞がらなかった。いや恐れ入った。なお、「×××」は敢えて訳しませんでした。
反北京の論調で知られる『蘋果日報』(8月20日)は、「公安傍観、デモは騒乱へ」との見出しで中国全土で最も過激な反日運動が見られたといわれる深圳でのデモを詳細に報じている。暴徒はレンガを投げ、棍棒で日本レストランを襲った。そこで従業員が「レストランは中国人の経営だ」と叫ぶが、彼らは「この漢奸め」と怒鳴り返す。漢族の仇敵に身も心も売った最低最悪の民族的裏切り者と断罪されてしまった、というわけだ。可哀想に。
暴徒は行き掛けの駄賃よろしく、病院に向かおうとしたホンダの車を襲撃し、レンガでガラスを割り、車体全体をボコボコに壊し、最後はひっくり返してしまった。周囲のデモ参加者、いやヤジウマが囃し立てたことは勿論だが、被害者が「これは暴民の行為だ。公安は見てみぬ振りだ。オレの車をぶっ壊すのが愛国なら、オレがダイナマイトで橋を爆破するのも愛国か」と訴えるが、公安は相変わらず見てみぬ振り。 ところで盧溝橋事件2年前の1935年、林語堂はニューヨークで欧米人向けに英語で『MY
COUNTRY AND MY
PEOPLE』(邦訳は『中国=思想と文化』鋤柄治郎訳 講談社学術文庫 1999年)を出版し、「中国人はたっぷりある暇とその暇を潰す楽しみを持っているのだ」。そこで「十分な余暇さえあれば、中国人は何でも試みる」と説いた。かくて「蟹を食べ、お茶を飲み、名泉の水を味わい、京劇をうなり・・・子供を産み、高鼾を立てる」まで58種類の暇潰し法を挙げているが、その43番目に「日本人を罵倒し」とある。
「反日は我らが暇潰し法の1だ」と開き直られても、「ハァそうですか」と納得するわけにはいかない。それにしても「鬼子の親娘を×××まうぞ」などを持ち出す辺りに、なにやら彼の民族の本性を見せつけられたような気がする。小人閑居して不善を為し、暇を持て余しては愛国無罪を叫び反日暴民と化す・・・おいおいキミたちは正気かい。《QED》
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