_塚本三郎元民社党委員長小論集_

日中関係が最大の難事    平成二十四年五月上旬    塚本三郎


 四月十六日、突然、東京都知事・石原慎太郎氏が、米国のワシントン市内の講演で、「日本人が、日本の国土を守るため、東京都が尖閣諸島を購入することにした」と述べた。
 石原知事は買い取りを決めた理由について、
東シナ海への中国進出の動きに触れ、「日本の国土を守るために島を取得するのに何の文句がありますか。やることを着実にやらないと、政治は信頼を失う」と話した。
 石原知事は「大原則は国のためだ」と、述べた。
 尖閣諸島をめぐって、平成二十二年九月領海を侵犯した中国漁船が、海上保安庁の巡視艇に衝突を繰り返し、船長が逮捕される事件が発生し、中国の反発を受け、日本政府は船長を処分保留で釈放するなど、日本政府のあいまいな対応に批判が集まった。
 「尖閣諸島周辺は豊穣な漁場で、自然エネルギーの開発でも、大きな可能性がある。
都がこれまで培ってきたノウハウも生かしながら施策を展開すべく、購入に向けて検討に入る」とするコメントを出した。
 尖閣諸島に対しては、従来から、全く見向きもしなかった中国が、近々、その近海には豊富な海底資源が眠っていることが発見された。
 中国政府は、国際法をも無視して、すべてのものは俺のものだと言いたいクセがある。従って先述の如く、中国漁船が、まず漁場荒らしに集中しており、日本の巡視艇にも、妨害を加えている。
問題とすべきは、こと中国に関しては、全くの弱腰の民主党政権の態度である。
 中国政権の実体を知ってか、知らずか、万事が、おだやかに、事なかれ主義に徹している民主党政権は、外交の本質を知らず、とりわけ、中国政権の強欲な外交を度外視して、善隣友好の、底抜けのお人好し外交に対して、イラダチを隠さない国民の立場に立って、石原都知事は、以上の如き挙に打って出た。
 さすがは、百戦錬磨の石原知事の発言だと感嘆する。
 尖閣諸島を「古来から国有の領土」と言い張る中国が、嘘と脅しをもって出て来た。
 海洋権益拡大を目論む中国にとって、同諸島は、台湾、チベット自治区、新疆ウイグル自治区と同じ「安全保障上、譲れない国家利益」と位置付けている。中国が今後、反日感情をむき出しにして、購入の無効を主張し、挑発行動に出ることが予想される。
 だが、機を見るに敏な独裁の中国政権は、相手の日本国が、愚昧な民主党政権ではなく、「百戦錬磨の石原都知事」であるから、果して堂々と真正面から挑戦するであろうか。
それよりも無能な野田政権に対して、数々のイヤガラセという、「裏から脅しを兼ねた工作」が始められるのではないかと予測する。
 『「NO」と言える日本』の共同著者である石原氏は、かつて、堂々と強者米国へも挑戦した男で、而も今回は、わざわざ米国の首都、ワシントンで、対中国への挑戦的発言とみる。
彼の巧妙さを多少とも知る者に納得させられる。
 こと日中間には、今日では数々の諸問題が残されている。
 日本は対中国との懸案は「釈迦に提婆」と私が述べている如く、日本人の善良さは、かえって国家としては、善隣友好のみでは通用しないことを歴史は証明している。
 その点を考慮せず、己の善意のみで、政権を運用することは独善であり、かつ卑怯のそしりを免れない。
 その欠点を堂々と指摘し、挑戦的に発言したのが石原氏である。石原都知事の、言わば捨て身の所業が、日中間に、否、日本の政治にとっても大転換となることを期待する。

中国との友好は隷従の心配
 中国による日本の国土への脅威は、石原都知事発言の「尖閣」だけに止まらず、日本列島の主要地域のあちこちに侵食している。
 最近では、新潟市と名古屋市で、中国総領事館の用地取得の動きが進んでいる。
日本は、外国人にも土地の所有を許している。
中国は利用権は認めても、所有権は認めないから、相対的に不平等である。
日本国内にある中国大使館、総領事館は七ケ所で、すでに、東京・大阪・福岡・札幌・長崎の五ケ所は中国政府に、広大な土地を所有されている。
 残る二ケ所が新潟と名古屋である。この二ケ所は賃貸で総領事館が運営されている。
新潟では今年三月、県庁そばの民有地一万五千平米が売買契約されていると聞く。
 名古屋については、地元民の強い反対運動によって、弱腰の民主党政権に鞭を当てて反対し続けている。中国は卑怯にも裏から手を廻し、政府に強硬に入手を促している。
中国政府の野心は、領界のみならず、日本国土の主要地域を手に入れることによって、治外法権と化してしまう手段であろうと疑う。
 名古屋市内では、県庁、市役所の近くに、公有地のうち、約三千坪の広大な治外法権地に領事館を設定せんと目論んでいる。隣地七千坪は愛知学院大学の建設が進んでいる。
隣地に治外法権地が出来たら教育上迷惑だと、政府の出方を心配している。
 その焦点となったのが、反対運動の市民を代表し河村市長の「南京事件」となった。
 市民を代表しての、河村たかし市長の発言が、中国政権自体の反発となったのは、単なる「南京事件」そのものに限っていない処に、事件拡大への根があると云うべきである。
 中国政権が、善良で穏健な民主政治の国家ならば、隣国として、友好親善のため大歓迎をすべき処である。しかし、中国と接する隣国のすべてが、軍事力で侵略して恥じない、云わば、何でも欲しがる「貪欲にして破廉恥な政権」であるから、心を許せない。
 友好とは、中国に限っては、結果として隷属隷従を意味する。従って、日本人は断乎たる決意と対策、及び体制の強化こそ不可欠と言うべきである。
 中国政権の指導者は狡知に長けた人物が揃っている。人民の貪欲集団の争いの中から勝ち抜き、生き残った勇者であるから。
 それゆえ、対日政策もまた狡知の限りを尽くして対処して来ると覚悟すべきである。
 「南京事件」の如く、百%の嘘であっても、平然と弁明し、宣伝する政権である。
 今回の石原都知事の「尖閣買い入れ」発言は、中国よりも、日本政府の戸惑いの方が大きいとみる。――唯単に、対中国との対立を避けたい民主党政権の、売国的外交を憂うる、石原知事の発想は、単なる思い付きではない筈だ。
 野田首相は、政府が買い入れることも思案の一つと云う。勿論国民の心配を除去する為に、政府が守護致します、との構えではあろう。だが果たしてそれが本心なのか。
対中国とは、ことを荒立てたくないから、お互いに、これまで通りに、付かず離れず日中双方が、利益分配を半々に穏便に過ごしたい。そんな本音ではなかろうか。
 石原氏は、それを危惧している。断乎たる領有権の事実を、物理的に活かしてみせる。
沖縄地方の領地を東京都が所有することの無理を、知事が承知した上での発言である。
 それは、民主党政権のフシダラな外交に、イラダチを隠さない国民の前に、堂々と俺達が守ってみせる。と豪語する石原都知事。それが百戦錬磨の日本人の武士道とみる。
狡知の中国はどう出る
 かくして狡賢い中国はどう出るか、今日まで抑制的だとの報道である。
 相手が個人所有から、「国有」となるのか、石原氏の云う「東京都所有」となるのか。
 相手を知って後出方を決める、ずるい中国であれば、まずは口先介入に止まっている。
 筋違いの領有、即ち石原都知事の言うが如くなれば「尖閣」の地は完全に守りきれる。なお、利用方法も東京の全知、全能力を活用し切ることが出来ると期待する。
 しかし、万一、現政権が買い受けると言って実行されれば、それに過ぐる良策はない。筋道は正常となる。だが石原知事が心配するように、ならば今日なぜ放置されたのか。
日本人自身でさえ、これらの島へ上陸を認めなかったこの地を、日本政府が果して厳然として、主権を守り徹すことが出来るであろうか。
 相手の中国は狡知に優れた政権である。正面から堂々と国際法に基づいて、正論を掲げての争いを挑むとは思われない。
 とりわけ、他国との争いに不慣れな、万事ことなかれ主義に徹した野田政権である。
三年間の民主党政権は、中国から足下を見られているから心配でならない。
 従って「日本国の主権は守り徹す、一歩も下がらない」。以上のような断乎とした確約をさせた上で、国有化に協力すると、石原氏は民主党政権に言明させ、確証を求め、その上での譲歩をしたら良い。中国政権が何でも他人の物を欲しがる乞食根性だから。
 中国政権は、辺境の地と評する隣国へ、強盗さながらに侵略し、帰属せしめている。
 既に、チベット、ウイグル、モンゴルと各地を隷属化せしめ、その国の人民を敵視し、監視する為に、軍を配置する姿は見るに堪えない。
そのうえ、西のインドとは敵対国的関係を作り出し、紛争の繰り返しである。その上、
今日なお、東シナ海、南シナ海の各地では、各国を敵対せしめて、「何でも欲しい病気の国」と綽名されている中国。そして、俺の国に面する海は、すべて俺のモノだ、との野卑な根性。それによって既に隣接する各国民を、東西南北四囲に亘って敵対せしめている。
その間に、自国民自体をも不平不満を増大させ、やがて、反政府デモを頻発し誘発せしめ、既に暴動化しつつあり、国の内外に、貪欲のゆえに、敵を作りつつある。
 反対に見るならば、自国民を平穏に治めることが難しいからこそ、国内の不満分子の鬱憤の鉾先を、外に向けさせる為の、侵略行為を重ねている一面もある。
 日本の外交防衛については、避けて通れない、対中国問題については貴い経験がある。
 八十年前の日支事変の拡大と失敗は、対中関係の教訓とすべきである。
 第一に、外交を通じて円満に解決する必要がある。だが外交には、その国力、取り分け防衛の武力が不可欠である。自国の領土は強固な防衛力をもってでも守る。
 第二には、同盟国の米国と緊密な連携と強化、特に情報の共有を欠かさない。
 第三に、経済的損失よりも、領土の主権が独立国の生命であるとの自覚を保持する。
 第四には、日本と同様の侵略の危機に脅えている、アジア諸国との共同戦線を考える。
 結論として、中国の人民は我々と同じ運命の下に生きるアジア民族である。問題の根本は、共産主義の一党独裁政権に在る。中国人民が敵ではないことを心底に持つ必要もある。






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