_塚本三郎元民社党委員長小論集_

遠水は近火を救わず(韓非子) 平成二十四年九月下旬   塚本三郎


 戦時中に育った少年時代の私からみて、在日朝鮮人は、私達と同じような貧しい生活をして、狭い長屋に、集まって暮らして居た。名古屋市中川区(昭和初期のこと)
 彼らは朝鮮名を名乗っていたが、日本の姓を名乗る者も居た。(本人の自由選択)
 小学校では、クラスの中で数名居たが、日本と朝鮮の両方の姓であった。しかし、その人達が、彼等特有の服装と態度であったから、在日朝鮮人と判別出来た。
 生活態度や、食糧は、日本人と異なって、臭気の強い物を食べていると思われ、近づくと異なった体臭を嗅ぎ取れたからであった。
 彼等には日本人であるという自覚はないが、我々と対立する態度は示さなかった。勿論、仲間のうちでは 自国語を使っていた。だが、小学校では日本語を充分に活用していた。
 クラスの中で、子供達の成績は特別に良い子も居るし悪い子も居て、その差は無かった。

日本の同和政策

 明治四十三年、日朝併合以来、日本政府は、朝鮮半島に対して同化政策に力点を置き、あらゆる場所で、決して差別しなかったばかりか、日本政府の国家予算の二〇%を朝鮮半島の「公共事業」に注入した。それゆえ鉄道、学校、道路、港湾等は急速に発展させた。
 特に顕著な点は、朝鮮併合当時、六〇校よりなかった小学校が、敗戦時、三千校へと僅か四十年弱の間に増設された。
 名古屋帝国大学より先に、京城帝大が設置された。宗主国が植民地国へ、教育施策を強化した例は絶無であった。従って、韓国人が云う、植民地政策の如き扱いはなかった。

 勿論、被保護国が、自ら卑下した精神状態に置かれたことは止むを得ない。今日の日米間にさえ、日本人の一部に、米国へのコンプレックスの心理が、否定出来ないように。
 日米間に於いても、対米国に対して被保護国国民らしさを大げさに取り上げ、反米、即、卑下の心境を露骨に示すことによって、愛国者振りの発言をする左翼偏向の人士も居る。
 それと同様に在日韓国人、及び朝鮮半島の人々が、被害者ぶった発言は、事実とは逆であっても、止むを得ない心境と認めよう。
 問題は、先進国に有り勝ちな、韓国のマスコミのおおげさな態度、偏向ぶりである。
 その一部の声を、あたかも大勢であるかの如く、愛国者ぶって、「反日の声」を大きく宣伝し、果ては、その国の思想を大きく歪めることも少なくない。
 「若し日本が、我々の韓国を、日本に併合してくれなかったならば、今頃の韓国は、ソ連の奴隷にされていたことであろう。
 日本が併合し、本国と同様の手厚い施策をしてくれたお陰で、アジアでは、日本に次ぐ第二の発展した国家となっている。」と、韓国の首脳が挙って我々に敬意を表してくれた。
 日韓議員連盟、会長 竹下登、副会長 塚本三郎、幹事長 加藤六月の体制で毎年、東京とソウルで、交代で双方の国家代表を招いて、懇談を重ねた、昭和六十年代のことだった。韓国は金泳三大統領。金支漢ソウル市長等々。

 勿論、当時と雖も、日本は韓国に対して大量の経済支援を重ねていた時代でもあった。
 韓国の指導者の大半は、当時、日本に併合されたことを、心底では良かったと理解している筈である。彼 等の心底には、対日本人への、あこがれの気風さえあった。
 その韓国が年々、日本、米国、中国等を相手として経済成長を達成して、大国となった。
 それゆえ一面では、むしろ、かつての被害者顔を示して、対日の非難へと、発言が転化し、僅か三十年の間に、かくも対日関係が悪化したことを、彼等の為に悲しく思いやる。

 韓国の為政者よ、冷静に周囲を見てみなさい、この二千年間、中国に対して頭が上がらずにきたのは歴史的事実である。中国が韓国を助けることは今後とも絶対にないと思う。

 助けるときは、属国にするときのみ。また、ロシアはまったく信頼できない。
 友好国となってくれるのは、唯一日本だけではないか、と心ある日本の指導者は云う。
 或る中国の忠臣が諫言した。もし失火したとき、その火を消そうとして、遠い海から水を運ぼうとすれば、海の水量は多くても間に合わない、近くの川の水こそ大切である。
 「遠水は近火を救わず」「韓非子」。――遠い親戚より近くのとなり 「日本の諺」

誤認の原因は日本にも

 米国の超党派の知日派がまとめ、八月十五日に発表された、「アーミテージ報告」は、
「日米両国が経済的にも、軍事的にも、強国であり続けねば、自由、民主、法の支配、人権といった価値観に基づく、国際秩序は確保できない」と主張する。
 「慰安婦問題などで日韓が揉めていれば、敵を利するだけだ」との認識を論じている。だが「慰安婦の碑を建てないよう、米国の地方自治体に働き掛ける日本政府の行為」などを批判している。

 問題は、このアーミテージ氏は、朝鮮人女性を、強制的に姓奴隷にしたという、「慰安婦の碑」に見られる認識を、大筋で受け入れている。これは彼の全くの誤認である。
 ただ、こうした誤認の蔓延に当たっては、日本政府の責任は大きい。
 日本政府は国際的な場で、繰り返し「謝罪と反省」の意を表している、という「逃げの弁明」に終始してきたことが、韓国側の、日本への「タカリの口実」に利用されている。
 事実は一つ。日本将兵による慰安婦の強制連行などなかった。この点を強調すべきだ。
 日本のみならず、韓国の男たちも、娘や妹の拉致を、指をくわえて見ていた腰抜けなどは居なかった。日本のみならず、韓国の父祖の名誉も守るという立場を強調すべきだ。
 日本政府は「先制降服」と云う卑怯から脱した「広報活動」を行うべきだ。
 河野談話の誤りを堂々と正すべきだ。
 李明博大統領が竹島に不法に上陸した。自信がないから、わざわざ小さな島でも行く。
 更に天皇陛下まで引き合いに出して「天皇がひざまずいて謝らなければならない」と発言した、これは絶対に許せない。過去の話は、日韓基本条約で、すべての問題は済んだことだ。韓国がそれを蒸し返すのは条約違反である。

 他国に、韓国がこれ程の非礼を働く「未熟国家」であることを天下に知らしめた。
 天皇に対して非礼の言動を述べることは、日本人にとっては最大の罪業である。
 日本の真実を知らない他国の責任者ならばいざ知らず。数十年間、同一国民として暮らした韓国人ならば、天皇陛下の尊厳と存在の重さを知らない筈はない。

 李大統領は、そのことを承知の上での非礼の発言である。而も事実にあらざる事を勝手に引用しての暴言は、大統領が、自らを辱める言動であったと受け止めるべきである。
 如何に反日の気運が高まる韓国人向けとはいえ、余りにも卑しい。
 自国民の自尊心をくすぐる狙いとしても、礼儀のカケラもない発言は常軌を逸している。日韓関係に容易には治癒しない傷を、負わせてまで、政府の人気を回復させたいのか、憤りを通り越して哀れである。韓国の政界にも常識の通じる人は居るであろうに。
 どうか「ノーズロ」の李明博大統領に、パンツをはかせてやってください。

 一方、菅、野田と二代続けて総理が、在日朝鮮人からの献金を受け取っていた。
 国家のトップが、外国人から献金を受け取っておいて、「バレても返せばお咎めなし」の国が他にあるのか。外国人であると知らなかった、との弁明であっても。

 野田総理は、今年八月十五日の戦没者慰霊式典で、「アジアに多大の損害と苦痛を与えた」と発言した。――英霊の慰霊の場で、「お前達はアジアで人殺しをした」といっていることと同じことではないか。
 戦死者の霊に向かって、どうしてこんな無礼なことを言わなければならないのか。

最も遠い国と近い国

 日本と米国との関係は、最も距離に在りながら、最も近いお付き合いの宿命を持つ。
 さきのアーミテージ氏の報告の如く、日本の果すべきアジアでの平和は、米国の後ろ楯無しでは成り立たない。全世界に於ける平和の守護神を自負する米国側からみれば、アジアにおいては、その最大の楯が日本国そのものであると、自認する。

 更に、経済的にも、日本と米国との協力は不可欠である。軍需産業は勿論のこと、巨大な航空、宇宙産業と雖も、日本の技術と部品の製造能力は米国経済と一体を為している。
 日米関係がより大切であるがゆえに、慰安婦の認識の誤りは声を大にして正すべきだ。
 日本と韓国とは、一番近くに位置して、避けることの出来ない、地理的存在である。

 日本の平和を侵す原因の大半は、残念なことに、朝鮮半島を通じての契機であったことは歴史が認めている。――ことの良し悪しを論ずるつもりはないが、遠くは蒙古来襲の元寇の役以来、戦国時代、そして日清、日露戦争等、すべてが、朝鮮半島が、日本への侵入の足場としてロシア、支那に利用された。その反省から、日朝の併合となった。

 皮肉にも日朝併合時代が、双方にとって、もっとも平安な時代ではなかったか。
 一番親しくせねばならぬ関係の朝鮮半島が、日本列島のノドモトに突き付けられた刃の如き姿であった。 日本にとっては、隣の国が、強大国として脅威を与えることは困る。
 だが弱小国として、ロシア、中国の手先とされて迫られるのは、もっと困る。
 今日の韓国は、漸く大人としての成長期である。それは日本にとって大きな希望であり、アジア安定の基礎でもある。日本は兄貴分として、面倒を見てあげたとの自負がある。
 その事実を承知しているがゆえにこそ、韓国は逆に反日の対抗心を見せる。

 日本国内で、経済界は勿論のこと、スポーツ、芸能界で活躍する人士の中で、朝鮮半島出身の有名人で日本に貢献している人は少なくない。有能な力量を大きく発揮している。
 昭和初期に育った我々にとっては、在日の韓国や北朝鮮の人達と差別する気分は全くない。恐らく、それ等の在日の人達も、祖国の政治家が、反日の声を高める度に、内心悲しく思っていることであろう。
 日本国としては、良かれ悪しかれ、韓国と日本が、独立独歩、その上で一番親しい兄弟として、共存の道を定め、政治家が是は是、非は非として、大人の大道を定着すべきだ。

 日本は遠い国の米国とは、うまく付き合いながら、近い隣国の韓国とは、摩擦が多すぎる。庶民の近所付き合いも兎角こうした因襲が似ている。それを正すのが大人の政治だ。
 その政治権力者が、自分の権力維持の為に悪用することは最も卑しい所業である。
勿論、日本自身が、自信と威厳をもって、対処することが絶対条件である。






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