_塚本三郎元民社党委員長小論集_

日本を希望のある国にせよ    平成二十四年十月下旬    塚本三郎


 野田総理が民主党内の選挙で圧勝し、再び代表の地位を占めて、引き続き総理大臣としてその任を続けることになり、その体制強化の為、直ちに第三次野田内閣を発足せしめた。
 自由民主党も、そのあとを追いかけるように総裁選を争い、安倍晋三氏が再び党総裁に選ばれた。
 「近いうち」の総選挙で勝利した党代表が次期総理大臣となる。
 世論調査による現況では、自民党有利の報である。だが「日本維新の会」も軽視できないとみる。何れになろうとも、次に掲げる国家的大事の実施に政治生命を懸けて欲しい。

第一は憲法を改正すること

◎日本国憲法が占領下に於いて、勝者中心に制定されたものであることは言を俟たない。
 特に、日米決戦で、米軍は予想を遥かに超える犠牲を強いられた。
日本軍の抵抗力を忘れない占領軍は、日本が再び強国とならないよう「永久弱体化」を狙った。その底意を持って、日本に押し付けたのが、日本国憲法である。
◎敗戦後の日本は、此の憲法を逆利用して「非武装、即非独立」「日本弱体化」の悪法と承知しつつも、日本国再建のため「平和憲法」と名付け、占領米軍をして、日本国家の傭兵とみなし、我々はひたすら経済再建に全力を傾けた。戦争によって、全土が焦土と化し、食糧にも窮する実状からして、日本国民の自負心さえ抑えざるを得なかった。
 戦後半世紀を経て、勤勉誠実な日本人は、勝ち誇る米国をも、大切なお得意様として商いに没頭して、着々と経済建設に成果を挙て今日に至った。
◎日本が自立、再建の余勢をかって、アジア各国へと、経済支援に乗り出して自国のみならず、アジア各国からも、期待と尊敬の念を勝ち得ている。
 日本国民の勤勉性、誠実さは、全世界に高く評価されつつある。
◎だが日本の発展がアジア、近隣諸国をも同様に、国力を強化しつつあり、日本のみが、独立自存であることを許さない。妬み、欲求は、隣国日本があまりにも魅力に満ちているにもかかわらず、国家としては、丸の裸そのままの姿ではないか。
 人間の近所付き合いは、兎角難しいものだ。同様に、国家間でも諍いが多い。最近に至って日本近隣、近海に莫大な資源の発見から、領土的野心が、年と共に危機を増大せしめている。その理由付けとして戦時中の、大東亜共栄圏構想を誤解と悪用する、中国と韓国の口実、即ち歴史認識は眼に余る。余りにも露骨、卑劣である。それでも対応を許さない。
◎この憲法の理不尽さを改めるべきだ、との声は、制定当時から叫ばれてはいた。
 だから、前述の如くで、今日の自民党が結成された時の第一の理念は憲法改正であった。
 それから既に約半世紀を経て、漸く、各政党が第一の政策目標に掲げざるを得なくなった。勿論、中国及び韓国の理不尽な、資源と領土的野心に対抗するには、この憲法が最大の障壁であるから。

第二は防衛力を強化すること

◎他国の侵略を防止することが最大の目的であることは言うまでもない。
 憲法前文に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」と宣言した。日本国はその文言通りの体制を維持して今日に至った。
 だが近年に至って、その信念と決意は逆に、平和維持の危うさを招いて来たと反省せざるを得ない。ロシアとの北方領土、北朝鮮の拉致、韓国との竹島、中国との尖閣諸島等々。
◎数えてみれば、奪われた日本の固有の領土及び人権は、正常に戻すどころか、逆に、その理不尽な周辺国の行動が、時と共に危険の度を高めている。相手国が侵略の欲望と魔手を伸ばしている。それは、相手国を責めると共に、そのような卑劣な行為を、心ならずも、日本国自身が招いた一面が在ることに気付く。
◎何れの国も聖者の集団ではない。まして、権力の地位に就く各国の為政者は、心ならずも、衆愚の欲望と野心に応えざるを得ない半面を背負っている。
 とりわけ近年に至って、日本領土の近海の海底には、莫大な鉱物、エネルギー資源が埋蔵されていることが発見されるに及んで、近隣諸国が、種々の手段と口実を並べて、侵略の魔手を伸ばしつつある。相手国をして、悪意や欲望の虜とさせる不用心な、裸の姿の日本自身にも、無責任、即ち、防衛力否定の原因が在る。
◎日本及びその周辺に、魔手を伸ばせば、大怪我を受けると思わせる「強力な防衛力」さえ在れば、こんな危機を招くことは無かった。平和は守るのみではなく、戦いをあたりまえのことと、構える体制が不可欠と信じるべきで、その為には、先ず自衛隊を強力な軍団として、国家を守り、若者を鍛え、近隣諸国への威厳を示すことが第一である。
第三は不況克服の為に内需を拡大することが急がれる

◎世界的大不況の波は暫く続くとみる。日本社会の少子高齢化は更に続く。民間産業が、日本国内のみならず、アジア諸国をもリードして来たが、その勢いは停滞しつつある。
 自由経済下では、民間企業を補い、日本経済を活性化させる為には、「公共事業」を思い切って大量に発注することを、国及び地方自治体が、大胆に発注実施すべきである。
◎東日本大震災の復興には、思い切った資金を、復興の具体化に注入する。政府は、例えば、この被災地方、各県に約十兆円宛て、約三十兆円の注入の計画をする。その予算で各県毎に、理想的復興計画と「実行可能な理想郷建設」の夢を与えることを提案する。
◎右の災害こそ天の警告として、日本国土全体の「防災施設の見直し」をする。国土全体の河川や橋梁の補強、見直し。日本海側の新幹線の施設。東京大阪間のリニアモーターの建設と早期実施。大都市及び観光地の共同溝による、上下水道と共に電線の埋蔵化。学校及び公共建築物の再検討。等々、挙げれば、内需拡大を求める公共事業は、数え切れない程に必要が迫られている。――問題は、その為の資金の捻出である。
◎一年間の税収約四十兆円に対して、既に政府及び地方自治体の借金は約一千兆円と云われ、更に借金は、際限無く拡大しつつある。それにどう対応するのか。
 この際、「政府紙幣」を発行して、その費用を捻出すべきである。既に各国は行っている。
◎国家には通貨発行の権利が在る。米国や、中国は、莫大な裏づけなき通貨を出している。例えば、日本政府は前述の公共事業に対処する為に、約百兆円の日本円を「政府紙幣」として、赤字国債の名で発行して、その借金を政府が抱えて、銀行や預金者には売りつけない。
 この方策は「丹羽春喜」氏が提唱し、徐々に理解が高まりつつある。
 百兆円で足りなければ、更に約五十兆円増しても良い。内需拡大、景気回復のため。
◎資産や税の裏付けなき通貨は、その価値が低下する、百兆の増発で円は一ドル百円に低下するだろう。百五十兆ならば、一ドルが百二十円近くになるか。円高対策の為ではない。しかし、結果として、円の正常化ともなり、輸出貿易の救世主として、内需拡大を推奨するゆえんである。しかし、一ドル百二十円に近づけば、インフレを警戒すべきである。
 世界一の巨大な借金を背負った日本政府に対して、そんな無理強いをすることは無謀だと日銀は云う。その通り、日本政府の歴代の政府が重ねた借金は減らすことが無理でも、せめて増やさない手立て、消費税増税等は現政界の当然の責任である。

第四は教育の基本を確立すること

◎最も平和で、誠実で、親切で思いやりの深い日本国民、その上、全体として公平な国家と自負する日本は、アジアのみならず、全世界から、最も尊敬されている民族であると自負して良い。――しかし、近年、日本国内では、凶悪な犯罪が続出しており、連日のニュースはこれ等の事件報道に、こと欠かない。
◎殺人、強盗、大切な親を殺し、また可愛いわが子を餓死させ、お金の為には愛人を殺して山林に捨てる。こんな凶悪な犯罪報道が、連日テレビ報道を占めている。
 勿論、僅かの件数であるが、今日迄の日本社会では、起きたことのない「事件の続出」である。関係者は一部の人たちと雖も、日本社会では在り得なかった事件である。
◎人間の形成は教育に拠る力が支配的である。日本人の道徳心は、明治二十三年に創設された「教育勅語」が学校教育の中心として、子供達の魂を、健全に育て上げて来た。
 何れの国と比較しても、抜群の秩序を保持しており、安心できる日本社会であったのも、
 敗戦後の日本が、復興出来たのも、「教育勅語」によって育てられた、日本人の、人間としての教育形成の土台が発揮されたことは疑いない。しかし日本の戦後教育の自由化が、その威力を消失しつつある。従って今一度、教育の基本を改め「教育勅語」の精神を取り入れるべきである。自由も、権利も、公平も軽視するものではないが、それ等の「人権には、責任と義務」が裏付けられていなければならない。
 
第五は、行政改革を断行すること

◎日本の高級官僚は最も優秀である。最高の学府を終えて、各省庁の特別の任に就き、その省庁一筋に、自らの能力を磨き上げて、位階の段を登り詰めた勝者そのものである。
 惜しむらくは、各々の「省庁在って国家無し」と評される如く。国家行政の縦の筋道そのものがすべてで、横の省、隣の省を眺める余裕がない。
 各省庁の行政が、時代の進歩と共に、行政の幅を広げざるを得なくなる。つまり、同じような仕事を、各省庁の役人が、別々に担当する。二重行政化が進んでいる。
 同様に地方の各府県の行政もまた、国と地方が、二重や三重に、同一の行政を行っていることが多い。それは、行政の無駄であるのみならず、指導を受ける国民にとっては極めて迷惑なことである。同じことを何度も指示される。官僚では、その点を是正できない。
 政治家は鳥の如く、高所に飛び立って、行政全体を俯瞰する責任が在る。
 政治家は行政を監督する任が在ると共に、人事権を行使することもできる。足りなければ、立法権を以って対応する、責任と権利をも与えられている。それが政治権力である。
 だが、その任を行使する為には、配下に在る官僚以上に、その能力、即ち指導力を保持していなければ実施することは無理である。政治家の資質が問題視されるゆえんである。
 民主政治の最大の難点は、愚民政治と評される「衆愚の代表化」を正すことである。






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