_塚本三郎元民社党委員長小論集_ _当会支部最高顧問、塚本先生世評_
日本の防衛力整備がアジアを守る 平成二十二年十月下旬  塚本三郎



 うぬぼれた表現ではあろうが、日本の防衛力が弱ければ、アジアは動乱の渦となる。その場合、アジアの支配者は、中国となるのか、それとも、ロシアが出てくるのか、どちらかに翻弄される。その両覇権国は、内政の不穏分子を抱えて、穏やかではない。



 内政の欠陥、即ち支配者の独善と汚職に反抗する不満分子を静めるために、権力者は軍事力を使って、政権維持に奔走するか、或いは、眼を外に向けさせることが常道である。



 ロシアも中国も、太平洋に勢力を拡大することが、権力者の念願であり、その為に、両国の指導者は腐心している。その出口には、北から南へと、日本列島が大手を広げて彼等の出口を塞いでいる。この両国にとっては、これ程目障りな日本という防壁はない。



しかし、その昔、既に日清戦争と日露戦争で、日本に痛い目に遭っている。



 時代の変化はすさまじい。第二次世界大戦で日本が敗戦国となり、その上、不戦の憲法を、米国の力で、再起不能となるべく押し付けられて今日に至った。



 日本がこの憲法を維持して、不戦を掲げている間に、この強大な両国は、日本列島に風穴を開けておきたい。それが北方領土問題であり、尖閣諸島問題として、日本列島を北と南の双方から、奪取する作戦である。



昔の朝鮮半島と似る日本



 今から一世紀以上前、日清戦争が始まった。その原因は朝鮮半島に在った。朝鮮の李朝末期、朝鮮政権は時に清国へ、或いはロシアへ、そしてまた時には日本へも媚を売り、近隣の強国への依存に終始して、自立心を失い、国内の政争に明け暮れた。



 そして、政権の危機には、すぐ清国の政権に兵力の救援を求めた。そのためには清国の属国であることを、何等恥としなかった。その上、李朝の政敵は、反対にロシアと結んで、李朝政権に対抗して、内乱を企てることの繰り返しであった。



 帝国主義の時代であるから、その中に在っても、朝鮮の近代化を進めなければ、自国の生存が危いと考えた、開化派と称される一群の官僚が居た。その指導者が金玉均であった。



 彼は、日本に学び、日本に協力を求めて、朝鮮の自主独立の道をさぐった。



日本では福沢諭吉が彼を篤く支援したと伝えられている。



 朝鮮の弱体化が、日本の存立を脅かし日清戦争となった。その由来と歴史を振り返ってみるとき、悲しいことであるが、今日の日本は、それとよく似ている。



日本は防衛については丸裸である。その上、国家を論じ、考えることの少ない、民主党政権が主役となっている。その姿は百十五年前の朝鮮と似ていはしないか。



 日本は、アジアに於ける大黒柱として、政治、経済、そして安全保障についても、各国では安心され、頼りとされる大国であった。少なくとも戦後の六十年間はそうであった。



 勿論、その背後には、世界一の経済力を持ち、軍事大国と自負するアメリカが、「日米同盟」として控えていたからでもあろう。



 危いのは、その日米同盟を忌避し、非難し続けた民主党の菅政権が誕生し、沖縄基地の米軍さえ国外へ追い出す気配である。それは昔の朝鮮の李朝政権が、「日本に協力を求めた金玉均」を追い出した如く、日本政府が、米国を遠ざける所業と余りにも似ている。



 朝鮮半島が中国の属国の如き姿であり、やがてその禍が日本に及ぶ危険に直面したから、日本自身を守るためにも、日清戦争を、そして日露戦争を戦わざるを得なかった。



 そのことに思いをいたすとき、今日の日本列島の弱体化が、アジア動乱の主因となりはしないか。逆に述べれば、日本が経済力だけではなく、軍事力の面でも経済力にふさわしい不動の力を整備し、日米同盟を強化しておれば、日清、日露戦争の如く、両共産国は、アジア全域に向かって、覇権の牙をむいて来る余地は無くなると思う。



媚中外交はアジア動乱のもと



 現代のロシアも、中国も、外交的には強大な領土と武力を持ち、更に豊富な兵力と経済力を保持していると豪語している。



しかし、中国の経済力は、自由世界が持ち込んだ投資力が中心である。その原因は低賃金のゆえである。しかし官僚の腐敗を心配する以上に、中国労働者の労賃の上昇から、各国の投資企業は、近隣各国へ投資先を移動させつつある。ゆえに内情は外面と異なる。



問題は日本がどう対処するかが中心である。



日本人が日本人らしさを失った。その原因は既に論じ尽くされている。問題はその欠落した体制をどう建て直すかだ。



政治家は今回の尖閣諸島事件をもって、戦後の国防体制を根本的に再興する機会にせよ。



 まず、「新憲法の創設」、「日米同盟の補強」、「集団的自衛権の容認」、「非核三原則の廃止」、「武器輸出禁止の解除」、「教育勅語の精神復活」、「合理的な徴兵制の実施」等々、既に識者の提言として論じ尽くされている。今こそ、それぞれの項目を勇断を持って実施することで国運を発展させる時が来た。



 今回の尖閣諸島の事件は、まさに天の警告である。泰平の眠りを覚ましてくれた中国の横暴こそ、日本国民に対して余りにも大きな指導警告者と受け止める。



 会う人毎が云う「このままでは日本が危い」、「何とかしないと日本は中国の属国となる」日本のマスコミは尖閣諸島事件について、極々控え目の報道であるのに、国民は敏感に、そして正確に事態を受け止めている。



 日本各地で、今まで政治問題に触れたことのない、倫理や道徳の既成組織が、一斉に政治集会と化している。そして、一度も政治に顔を出したことのない若者が、自発的に友を誘って参加して来る。仏教には、一大事に直面する時に、指導者が誠意を尽くせば、周辺各地から、目覚めた人達が地から湧き出てきたように集まって協力する、それを地の菩薩と呼んでいる。今日の日本は、全国各地から「地の菩薩」の合唱となりつつある。



 尖閣諸島事件については、漁船が堂々と衝突を仕掛け、日本の海上保安庁の船が傷んだ。



中国は自国の領有権内であり、外交問題だと主張しているのに、日本政府は、単なる領海侵犯とか、海上交通事故の裁判問題と矮小化し、相手の機嫌を考慮している。



 この態度は、問題をより大きくするのみだ。与しやすしとみれば、余計にツケアガルのが独裁者の行動規範である。特に最近の中国は眼に余る乱暴である。この中国との折衝を見ると、民主党政権になって、日本政治が急激に弱体化したことは否定できない。



 こんな傾向は、既に小泉政権以後の自民党政権時に、その心配は表面化していた。いや、だからこそ、一度「政権交代」をしてみたらと、国民が期待をこめて民主党の大勝を招いたのではないか。その期待の選挙結果が裏目に出た。



とりわけ、リーマン・ショック以後のアメリカ経済の弱体化が、そのまま日本経済を脅かしている。特に製造業に強いと自負した日本経済は、輸出先のアメリカや中国に、円高と呼ぶ「伏兵に囲まれて」元気を失い、弱体化を余儀なくさせられている。その結果、円高によって各企業そのものが、生き残りの為に海外へ「逃避の投資」を速めつつある。



だからと云って内需拡大のためには、巨額の国債を抱えた日本政府には、公共事業をはじめとする内需拡大や、新規投資を進められないジレンマが、弱体化した日本経済の手足を縛って、身動きが出来ずに苦しんでいる。



マネー敗戦のツケ



 経済に疎い菅内閣と雖も、景気の回復、防衛力の整備、円高阻止が頭の片隅に残っている筈である。だが経済政策の素人集団で、有言実行と思われるから、大胆に提言する。



 前のレポートで、「今こそ通貨の大増発が必要である」との表現は粗雑であった。



 その趣旨と目的は間違いではない。しかし実際には、政府が日銀とは別の通貨を発行すれば、「二種類の通貨」で、市場は大混乱を招くから、実状に合わない。訂正して言えば



政府の「通貨発行権」を発動して、発行権のうち一定の金額を日銀に売り渡す(例えば、まず五十兆円)、それだけの金額を、日銀が電子信号で政府に送り込む。政府は国債ではなくして、膨大な金額を手にする。それを六年間続ければ、大変な力となる。



政府は「通貨発行権」と呼ぶ、「打ち出の小槌」を持っている。政府はその金で、経済政策の重点である、公共事業、福祉政策、防衛力整備等に使うことが出来る。そのことによって、デフレ・ギャップ(約四百兆円)と云われる分の穴埋めにすることができる。



このような趣旨を説くのは丹羽春喜教授で、大胆であるが私も賛成である。



 日本政府が、裏付けなき通貨の発行は、通貨の信用と価値を弱めると日銀は心配する。しかし今日の日本は、通貨の円が高すぎて困り、それがため、輸出企業は危機に直面している。一ドル八十一円ではなく、せめて百十円程度に戻るまで、政府の「通貨発行権」を発動させるべきだ。



 過日の中央銀行総裁会議では「過度で無秩序な為替変動は、世界経済に悪影響を与える」との原則を改めて確認している。世界の「通貨安競争」に歯止めをかけるためには、米・中を含む主要国が、責任をとるよう、日本から強く求めるべきである。



 円高が加速しているのは、既に昨年、米国は膨大なドルを出し、(約二百兆円)更に追加の金融緩和に動くとの観測が紙上に広がっているからである。



 中国は元の値動きをドルに連動させ、恒常的に、人民元を低めに誘導させている。中国が輸出振興を目的に、人民元の切り上げに消極的なことが、世界の通貨安競争に拍車をかけている。昨年は約百五兆円、そして、つい先日の中央委員会で、更に四十九兆円の追加を決めている。元安で得た世界一の貿易黒字を使って、軍事力の強大化と、失業救済のため、国内のバブルを煽って、不動産投資に向かっており、他国のことは省みない。



 日本の円高は、「ドル安」であり、かつ「元安」のシワヨセである。だから日本も、通貨維持のため為替介入に向かっている。しかし、米国と中国が反発しているから、小手先の手段でしか手が打てない小心者とみられている。



 日本は、米国及び中国と同等の金融政策を行うべきで、独立国には通貨発行権がある。日本政府は、莫大な国債を抱えているから、国債の増発は慎むべきである。しかし、デフレ・ギャップとして、(約四百兆円)の生産能力を見捨てて、若者の就職難を増加するよりも、政府の通貨発行権という「打ち出の小槌」を発動し、当面は(約五十兆円)を使って経済の自立性を発揮し、景気回復、防衛力整備、円高阻止に向かうべきではないのか。


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