_塚本三郎元民社党委員長小論集_ _当会支部最高顧問、塚本先生世評_
避けられない日中の摩擦  平成二十四年二月上旬      塚本三郎

 平成二十四年一月早々、野田首相は、内閣改造による新政権を再発足させた。

 理由は、「社会保障と税の一体改革」であり、日本の財政立て直しに、無関心ではないぞ、それに反する者は非国民だと、党内外への強いアピールである。

その上、勤労者を支持の中心に背負っている民主党としては、「社会保障」は不可欠の政策であるから、党員に対する安心感と、増税の組み合わせでもある。

 だが、その内心は、一川防衛相と、山岡公安委担当大臣の二人が、参議院で問責決議を受けている。この二人を辞任させなければ予算審議には応じないと主張する、野党自民・公明両党との強い要求に、正面から応えることが出来ない、党内事情が在る。

反主流派の大臣二人を辞任させる、回り道としての改造劇である。国家の責任よりも党内融和第一、即ち自らの延命第一と断定せざるを得ない。野田改造内閣の実体である。

 改造名目の防衛相が、素人発言に端を発しているならば。彼を辞めさせた代わりに、せめて「素人ではない人物」を選任すべきだ。民主党には、そんな人物は雨夜の星ではあるが、せめて従来から国家の安全保障に熱心であり、防衛省、自衛隊に信頼を得ている「旧民社党育ち」の議員も相当数民主党に在籍している。

 その中の一人を選ぶだけの首相らしい人選、安全保障の重大事をなぜ示さないのか。

国政の最大の責任を失った野田首相は、辞めさせた防衛相の後釜に、またも小沢派の、防衛に素人の田中氏を選任した。この人では、再び、無能を暴露するのではないのか。

 こじれている「普天間基地問題」を担当させるのに。再び、党内融和を中心に配置するとは如何なる神経なのか。

中国の発展と危機に対処

 日本が直面する最大の課題は、隣の中国に対して、どう対応するかである。

 一昨年の尖閣諸島沖の衝突事件に対応して以来、日本政府は、独立国家らしからぬ、事なかれ主義が、国民をして、いらいらさせ危機感を増大せしめている。

日本国民は、野田内閣の腰の定まらない防衛と外交に、怒りの心さえ抱いている。

それにも増して、国民感情は、中国人に対する嫌悪感が、日と共に増大しつつある。

 最近のマスコミ報道は、中国人に対して、日本人の倫理、道徳と、比較して、全くかけ離れた人種として、破廉恥な行動の数々を、詳しく伝える文書が街に溢れている。

 中国人の行動、とりわけ経済行為は、日本人と比べて余りにもズルく不誠実である。

 この様な国に、日本企業が、今まで「津波の如く」投資し、よくも堪え続けたものだと気付く。何れにしろ、今日の日本政界の対中国問題は、避けて通れない関門である。

 まず何を措いても、日本国家として、防衛力の整備強化こそ緊急の大事である。

 その一番大切な国事を、最も軽視し、ないがしろにしている民主党政権が誕生し、防衛相に、相次ぐ素人を並べたことは、日本国家の受けるべき「冷酷な天命」なのか。

巨大な矛盾を国内に抱えながら成長し続けた中国経済は、最近に至って、大の得意先であるユーロが危機となるにつれて、中国経済そのものが受ける影響は甚大である。

日本経済が危惧すべきは、欧州を最大の貿易相手国として、数千億ドルものユーロ建て債券を保有する、中国が受けるマイナスの影響である。

日本の海外投資は、近年アメリカ以上に、中国を相手とする貿易の量を拡大して来た。

アメリカ経済の低迷から、中国へ重点を向けて来た投資が、日本経済の成長を助けて来た事実は否定出来ない。だが、日本の最大投資国中国が、EUよりも、更に危い状態となっていると指摘することは少し言い過ぎか。

日本のみならず、アメリカも欧州も、津波の如く中国沿岸地域に資本を投下し続けた。

中国の異常な急発展の真因は、世界中のマネー及び工場、そして技術が、集中して中国へ押し寄せたからである。

中国の破綻を警戒

受け容れ国、中国に条件の変化が生じたならば、相手側、即ち投資国は逃げ出す。

中国の人件費が年と共に高くなり、月給が約一万円から、三万円へと上昇しつつあり、周辺のアセアン諸国よりも割高となりつつある。加えて、中国官僚の理不尽な要求は、嫌気を重ねる。従って投資は徐々に控えられ、近隣諸国へと移動しつつある。

そこへ、欧州の危機が、突発し、中国へ、ダブル・パンチとして襲っている。

中国経済が、この十年間、急発展した原因が、投資国の米国やEUにあるから、求められるままに、中国は、米国債やEUの債券を、大量に保有して来た。その債券が大暴落して、多大の損失を受けている。加えて先進国が徐々に投資を控えつつあるから、急激な経済成長が、徐々に下降し、国内矛盾が露出して来た。それを支える為、中国政府は、公共土木事業(高速道路、高層建築と住宅)によって失業者の救済を続けた。

その住宅ブームも、政府の財政施策から生まれた以上に、人民の拠出による個人銀行(高利金融)中心であった。つまり借金政策による「住宅投資」中心の購買力である。

中国の住宅建設は、かつて米国が蒙ったサブ・プライムローンの破綻と同じ道を歩むことになろう。架空の経済成長として、年率一〇%を保持しなければ不況であり、失業者の増大を招くことは、自由経済の歪みを、悪用した施策の当然の結末とも思われる。

中国は、公共事業であるべき住宅政策を、便利な民間会社の「高金利政策」を容認し、「バブル政策そのもの」をデッチあげたと言うべきである。このような理不尽な政策は、やがて、その報いが表れる。

人民の欲に固められた融資。それを住宅投資に振り向け、値上げを予定しての、住む人の居ない「カラの住宅投資」それは人民元の増発となり、結果、物価高を煽り続けた。

資産の裏付けなき、多額の通貨発行の土木事業は、中国内の物価高を煽ることとなった。

中国政府は、物価高による人民の不満を抑える為に、止むなくインフレの抑制に乗りださざるを得なくなった。その第一が、闇金利による住宅投資と住宅購入の規制であった。

米中戦争の谷間で

 二百近い独立国家が、全世界に存在する。すべては国家在っての自由であり、豊かな経済生活である。日本国憲法が、防衛力を否定しているからと云って、日本国家のみを特別の、穏やかな眼で対処してはくれない。それは冷酷な国際社会の常識である。

 否むしろ、日本政府は、如何なる無理難題を持ち込まれても、堂々と正当な反論も対抗も出来ないことを見越して、各国は理不尽に威圧を仕掛けて来つつある。

中国政権の威圧は、限界を超えており、横暴の実態は眼に余る。

 中国の態度は、自国の防衛力。資源確保。台湾攻略。等々の野望は、軍事力の拡張に見られる如く、露骨であり国際常識を逸脱している。――そして遂に軍事大事として、アメリカと競う、世界制覇の野望の意図をも露骨に思わせる。

 日本は、やがてアメリカと中国との、覇権争いの間に立たされつつあることは、避けられないとみる。

 それゆえアメリカは先ず日本の同盟国として、「日米安全保障条約」に基づいて、防衛の責任を果たすと言明している。日本を守ることは、日米双方の為と考えているから。

アメリカが日本を拠点として、防備の陣を敷けば、対する中国はまず、アメリカとの争いの前に、日本を手の中に入れる為の戦略を立てている、と見るべきである。

大東亜戦争の二の舞か

 昭和の初めに育った私にとっては、日支事変と大東亜戦争を戦わざるを得なくされた、昔の悪夢が忘れられない。アジア動乱の火種は、中国の無責任で、国際常識を無視した、政治と経済行動であり、加えて、その裏での「陰湿な連合国」英・米の策謀であった。

 平和とは、憲法を言い訳にして、何もしないではない。まして攻撃しないことや、国家を守らないことでもない。日本が自国の平和を護る為には、対立する中国やロシアや北朝鮮の共産国が、絶対に手出しの出来ない、「強固な防衛力を築く」こと以外にない。

 防衛力の整備強化は、アメリカに頼まれてすることではない、自分の国を守るだけではなく、日本自身が、太平洋に於ける自由を守るため、危険な共産主義勢力の侵出を許さないだけの防波堤として、すべての問題に先んじて、独立国らしく行動することである。

日本の政権は、残念ながらそれとは全く逆の方向に進んでいる。

 日本の防衛費は年々削減して、既に五兆円を切っている。それとは逆に、中国の軍事費は、年々増額して、今年は既に八兆円を超えたと発表、実際はその倍額ではないか。

 中国は東シナ海への脅威を急速に高め、空母さえ、用意していると報じられている。

 今日の実状は、七十数年前の大東亜戦争勃発直前の日本が、追い詰められた瀬戸際と、余りにも似ている。

日本は、石油や鉄鉱石などの資源は産出できない。アメリカから高関税をかけられ、やがてその原材料さえ輸入を押さえられた。

昭和十六年十一月二十六日「日本が中国、仏印から一切の軍隊を引き揚げ、重慶政権のみを中国の正当政府と認める。そして日独伊三国同盟を破棄する。」

米国から突き付けられたハル・ノートは、以上の如く、日本が満州事変以前の状態に戻すことを要求した。これは、米国と戦う意志を全く持っていなかった日本に対して、米国から先に「宣戦を布告」を通告されたと同じ意味を持っている。

「もしここで日本軍がシナから撤兵したら、シナの侮日思想はますます増長し、第二第三のシナ事変が勃発するに違いない」と言い切り、撤兵をしたくとも、軽々にそうすれば、さらなる混乱が大陸に、そして日本とシナとの間に巻き起こることを、当時の責任者東條首相は危惧した。                  (東京裁判、東條英機供述書)

 戦争は、好まざる国にとっても、容赦なく迫って来る時が在る。

ハル・ノートというのは、ハリー・ホワイト米財務次官補が作成し日本に突きつけた公文書である。――彼は戦後、ソ連のスパイだったことが明らかになった。

日本を取り巻く、今日の近隣状勢(中国、ロシア、北朝鮮)などは、日本人の常識とは相容れない諸国家である。彼等が脆弱な野田政権を翻弄させている。謀略中心国に囲まれた日本は、今年こそ富国強兵の日本、本来の姿に立ち返るべきではないか。


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