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 画角の中と外

 「トリミング」という技法がある。撮った写真の不要部分をカットする
ことであるが、撮影時に画面の中に入れる範囲を決めるいわば、景色を切
り取ることにも用いられる。

 いたって単純な技法であるが、伝達手段として重要な役割を果たす。
以前、女性起業家でドキュメント番組のキャスターを務めていた、佐々木
かをりさんを取材していたとき、イベントで彼女の旦那さんが、講師とし
て話をしていた。
旦那さんはテレビ制作の仕事をされているようだが、その内容が、興味深
い。

“ロス・アンゼルス地震が起きた。現地へ飛ぶ前にテレビで地震の様子
を見た。
その後、阪神淡路地震が起き、駆けつける前にテレビでその様子を見た。
どちらもテレビでは、同等の大変、大きな地震であることは分かったのだ
が、実際に現地へ行って、見るとロス・アンゼルスはテレビでの印象ほど
ひどく感じられなかったが、神戸は、テレビの印象以上の惨状であった。

 つまり、「カメラとは、事実を写しているが画角以上のものは、写せな
い」”という話であった。

 ロス・アンゼルス地震は、道路の橋桁が落下した映像が、世界に配信さ
れ、巨大建造物が一瞬に破壊された地震のエネルギーを印象付けた。
いわば、地震の大きさを物語る映像が、映像では見えない被害が視聴者の
想像で展開されたが、実際には映像がもっとも被害の大きい箇所だった、
ということになる。

 対して神戸は、被害の実態が、映像では納めきれなかった、というのが
この話から分析できる。

カメラとは、カメラマンがその場に立ったとき、何処を写すか何処まで
入れるか、によって伝わり方が大きく変わる。つまり、新聞やテレビなど
の二次情報は、カメラに写っていない部分をより正確に想像できるか・・・が
見る側にも必要であることを意味する。
 四年後、地震当時の損保に関る仕事で神戸へ行ったが、阪神高速の割り
込みが、激しいことに「震災時に脱出の経験が尾を引いている」と説明さ
れたが、これも映像に写らないひとつの実態でもある。