写真論TOP
 第二章について
 右の写真は、ある記事に合わせて撮影したものである。
残念ながら、
HDが故障して元データが消失したため、印
刷されたものしかないので、元写真との比較が出来ない。
 さて、この場面だが、瀬戸市の工場解体現場を通りか
かったときに同行のライターさんにモデルになってもらい
撮影したものである。ライターさんいわく、この場所を見
ただけでメディアを通して見る戦場のイメージと重なるそ
うだが、実際に戦争を見たことがない我々の世代では、メ
ディアの戦場とビル解体現場は、印象で重複することを意
味する。

 これが、白黒写真となって暗部を黒くつぶし印刷した紙
面で見せると大半の人が、戦場跡地、と答えた。私自身、
子供の頃、近くにある軍需工場跡地が、空襲を受けたまま
の状態で何年か放置されていたので経年はあるものの「空
襲後の景色」の実物は見た経験がある。
 そこでこの写真をそのときの建物の質感に近付けるよう
にトーン調整をしたのだが、おそらく、建築や軍事の専門
家がこの写真を検証すれば、爆撃や砲撃の壊れ方とビル解
体での壊れ方では違うことを見分けることが出来るであろ
う。
 しかし、世論に訴える場合、全く戦争に縁のない人
たちが、戦場跡地の写真として見せられたときなどは、印
象や同情などが脳裏を支配し、検証することなく感情で肯
定しかねない場合もある。プロパガンダ写真は、そのよう
な作用で世論を味方につけるために作られる写真であり、
検証なく同調し、正論を伏せてしまうことに知らず知らず
加担することのないようにこの写真が、理解の材料となれ
ば幸いである。