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 焼き込み・覆い焼き(続き)
 理由は、引き伸ばす機械が、完全に均等な面光源を照射できないこと
と印画紙の露光寛容度の狭さにある。したがって白く出難い部分に多く
露光することを「焼き込み」と言い、黒くつぶれる部分を覆って露光量
を減らすことを「覆い焼き」と言う。
 この技術によりフィルムにあってそのままでは再現されない情報を浮
かび上がらせることができる。例えると風景を撮った場合、地上は程よ
い出方をしても空は、フィルムで雲が写っていてもそのままでは、全体
が白くなり印画紙では雲が再現されない。そこで空の部分の露光量を増
やすことで雲を再現できる。
 ただ、暗室技術はそれなりに自信はあるのだが、デジタル時代に入り、
かつて焼きこみに苦労したフィルムもスキャナの機能と画像処理ソフト
を活用することで更に高度な再現が出来たのは確かであった。


さてこのアナログチックな焼き込み技術は、出難い画像を再現する有
効な手段であるが、逆に邪魔なものを黒く潰してしまうにも有効な手段
でもある。ということは、「再現する技法」であると同時に「表現する
技法」でもあるわけだ。
「再現」は写真の「真」であるが、「表現」は「真」からはみ出る「意
図」が含まれてくる。
「トリミング」は画面の不要な箇所をカットする技法だが、カットでき
ない箇所に邪魔なものがあった場合、それが、黒っぽい背景なら、更に
露光を加え、黒の中に邪魔ものを溶け込ましてしまうことができる。
冒頭、
UFOの仕掛けの糸は、逆に全体に白っぽい空に溶け込んでいたも
のであろう。




焼き込み次第で写真のニュアンスは大きく変わるものである。また、
写真を合成したときに生じる不自然な輪郭などは、焼き込みや更に高度
な毛抜き合わせで消すことが可能だ。
これは、写真が報道として使われたころには、既にあった技術である。